自分を貫くとは、自由と挑戦と少しの苦痛でできている。

今年の年明けに友人たちと淡路島へ旅行に行きました。その時に安藤忠雄さんの建築である本福寺に行こうという話になり行きました。まだ新型コロナウィルスという話も出てない頃で、それは平和な旅でした。

御堂は地下(建物内)にあり、蓮の池から下に降りて行く一本の階段の下にあります。建物の中に寺を作るという安藤忠雄さんの創造力はどこから来るものなのだろうと思いますが、とにかくそのお堂は素晴らしかった。荘厳というほどの大きなものではないけれども、ある建築のディテールの隙間から見事に仏様の背後に光が差しこむように設計されており、また横から回ればそちらに歩いて行けるようにもなっている。

何を書きたいかというと、本福寺で引いたおみくじに書いてあったことに心が動いたという話なのです。
内容は以下の通り。

「貫」自分を貫くことは容易ではない。独りよがりでも他人の評価ばかりでもなく自分を知ることがまず先。自分を貫くとは、自由と挑戦と少しの苦痛でできている。

ちょうど昨年末くらいから色々と変化があり、事務所の状況が変わりつつあることに戸惑い始めていた頃だったと思います。そこで引いた紙に書かれていたことが、もっと自分を貫けということでした。
自由と挑戦と少しの苦痛。まさしく今必要だと思えることがここに書いてあり、また安藤忠雄さんの創造力もきっと自由と挑戦と多くの苦痛でできているんだとそこで理解したのです。

幼少期に比べれば自信がついたものの、正直今でもあまり自信がある方では無いですが、その苦痛という所から逃げるから自信がないということにもつながると思います。実際に自由で挑戦的で居つづけることは、とても大変なことだというを11年のフリーランスデザイナーの経験からはっきり言えるわけですが、それを自分の中で少し忘れつつあったのではないかと思ったのです。

多くの起業家は「社会貢献」を目指します。経済的な成功を求めて第一にフリーランスになるということはきっとほとんどないでしょう。そうしたマインドをアントレプレナーシップ(起業家精神)と言いますが、多くの偉人達は対象となる相手の利を先に考えて行動していたと思います。

キャリアが増え、従業員が増えると考えなければならないことも増えた。と言い訳すれば、私は少しそうした初心というか初期衝動を忘れつつあったのではないかとも言ってしまえますが、もともと私は誰にとっても良い社会をデザインで創造する手伝いをする。そのためにはいつでもどこでも誰でも使える、関われる、良いデザインを生み出していく。そういう気持ちを貫く必要こそ今あるのだろうと思います。

安藤忠雄さんの昨年末の講演会に行った際、「みなさんは安藤事務所は成功されているとお思いでしょうが、そんな安藤事務所も年中失敗している。世界中のコンペに負け続けている。そして負けた時に悔しいから勝った案を見た時に、やっぱり勝った案の方が優れているなと思う。」とあの独特のすこししゃがれた声で言っていました。安藤さんは自分を貫いているなと、そんな言葉から回想できてしまう。貫いているからこそ相手を理解できる。相手に理解してもらえる。そんなことを学びました。

今でも時々学生さんや若いデザイナーから先輩デザイナーとしてのアドバイスを求められることがあります。ですが今の自分に彼らにアドバイスできることがあるか少し疑問になってきました。そんな私の話でも在り難く聞いてくれる人もきっといるとは思いますが、もっともっと自分を貫いてから、また彼らに会いたいなと思います。そうした習慣も初心を忘れることに一役買っていたようにも思うのです。

こんな時勢ですが、苦痛の伴う、自由と挑戦の日々をこれからも続けようと思います。その先に人や社会への貢献を形にできたならば、その言葉は後進の人にとって寄り添えるものにきっとなると信じながら。

気温15度、春の陽気も少し感じられる日曜日の黄昏にスタッフの居ない事務所にひとり。

自分と向き合う為にぼーっとしていたら書きたくなった話題でした。

Tweet about this on TwitterShare on FacebookShare on Google+Share on TumblrDigg thisPin on PinterestShare on LinkedIn