想いは紙飛行機に乗せて。

新年がはじまってから色んな事があり、状況や心情の変化に色々と追われているうちに桜散るこの季節に綴るこの投稿が今年最初のブログになってしまいました。

イタリアはミラノで開催された家具の国際展示会ミラノサローネ(以下サローネ)に今年も出展してきました。2015年の展示から3年連続、通算4度目の今年の展示はおどろくべき事に3か所同時展示となりました。まずはこれまで3度出展した35歳以下限定の展示会サローネサテリテが今年20周年であり、その記念展示[20 Years of New Creativity]に2015年に出展したTRANSシリーズからコートハンガーが選出されミラノ市内北西に位置するLa Fabbrica del Vaporeという古い工場跡にて展示されました。過去20年の蓄積はとてもすさまじく、会場には数百点の作品が展示されその歴史の重さを感じました。

思えば2011年の元旦に「来年はサテリテに挑戦しよう」と心に決め、何もわからずネット翻訳を駆使しながらどうにか出展に漕ぎ着け、相棒エンヤとの出会いでもあった2012年の展示。出展回数に限りがあるこの展示会に2015年、2016年と出展させてもらえた事は自分の中でとても大きな意味を持つし、極東の島国からヨーロッパの一番コンセプチュアルな展示会場に乗り込んで作品を見てもらうという事は改めて考えれば途方もない挑戦だと思う。少なくともこの事実は自分のアイデンティティの一部として今も働いています。そんな事を振り返らせてくれる[20 Years of New Creativity]でした。5年という月日は僕らがどれだけ前に進んだかを教えてくれました。2012年の出展がなければまた全然別の人生だったのかも知れないけどきっとここまで来れていないと思います。これは一つのセレモニーですが大きな区切りですね。

そして2つ目の展示はイタリアのインテリアブランド[Cappellini]のオーナーGiulio Cappellini氏が主宰するイベント[White in the city]内の若手デザイナーの展示会[White young innovative]に会期1ヶ月前に出展オファーの連絡入り急遽出展する事になりました。場所はTICINESEにあるCLASS EDITORI SPACE。日本からはYOYと僕らだけでそれ以外は欧州のデザイナー達で構成された真っ白の展示会。この会に以前から構想を持っていたフロッキー塗装のトレイ[SNOW TRAY]を急遽製作し展示しました。この作品はフランスのエディターズブランドのディレクターに帰りに立ち寄ったパリで渡す事になりました。サローネにはこうした街中で開催される[Fuori Salone]という枠組みに何百という展示が存在します。この展示はその中でも注目の展示でした。

そして3つ目の展示はデザインディレクター上野侑美さんが主催する実験をテーマにした展示会[experimental creations]の3度目のミラノ展。experimental creationsは以前から出展してみたいと思っていた展示会で、マテリアルデザイン自体も初めての試み。今回展示したDEEPER PAPERは和紙の製作プロセスを基本とし、その中に卵の殻、アボカドの皮、オレンジの皮、ヤシの繊維、コーヒーの出し殻など日々の暮らしの中で生まれ出てはすぐに捨てられてしまう物を紙の構造体にしようという試みです。写真はその展示の様子。先の2つの展示は搬入も物を渡すだけでしたので実質今年はここがメインでした。

場所は数年前からサローネで最も注目のエリア[VENTURA LAMBRATE]。過去の展示の評価が良かったらしく今年はVENTURA XVというかなり中心に位置する会場。周りはDYSONやFRAMEなどの知名度と資金力のある展示が並ぶ。そんな中でもexperimental creationsは出展者たちが自らの手で展示ブースを立ち上げて行くインディースタンスは変わらなく、そのセットアップを進めるうちにメンバー同士の人となりも知る事ができるし、僕が連れて行った学生はそこで一線のデザイナーと知り合う事ができる。こういう事こそ出展してみないとわからないし目に見えない多くのメリットがある。twitterでも少し触れましたが、ここ数年のサローネのトレンドはやはりマテリアルデザイン。欧州を中心に大量生産大量消費からの脱却がスタートし、本当に環境に良くて美しい物ってないの?という問いとソリューションで溢れています。

ただそこにはまだ複数の段階が必要で、企業はまだまだバイオ素材やエコマテリアルの使用は少しに留まっています。マテリアルデザイナーへの報酬やプラットフォームもきちんと確立されていない為に、開発したは良い物の宙ぶらりんになっている素晴らしい素材が多くそれらは使われる機会をずっと待っているような状況です。その一つの鍵になるのがマテリアルライブラリーだと思いますが日本はそこも随分遅れています。VENTURA LAMBRATEには多くのマテリアルライブラリーが視察に訪れます。ここにはそういった実験段階の新しい可能性あるマテリアルが並んでいるからです。そのブリッジをする役割としても展示会にはメリットがあるのではないでしょうか。

欧州の展示会でいつも印象的なのは一般層のデザインの関心の高さ。そして環境への関心の高さです。まずケミカルな物を使った物を展示した場合はなぜそれを使ったのかを問われます。そこに必要性が無ければそれはデザインの失敗として彼らは捉えます。そういった意識の高いマーケットに対して、今回の展示にはケミカルな物はおろか、糊さえ使わない完全にナチュラルな物でどこまで攻めれるかという挑戦をしました。燃やしても害のない、埋めても分解される。そんな環境適合性の高い物への実験を試みましたが、同じような事を一緒に展示していた昨年のLEXUS DESIGN AWARDの覇者AMAM(荒木宏介・前谷典輝・村岡明)やoog design studioが考えていました。時代の軸がここにありますね。今回この紙のプロジェクトを象徴する物として日本の提灯を作りました。天神祭などの提灯を作っている老舗の提灯屋さんにもみ殻の入った紙とたまねぎの皮の入った紙で提灯を貼ってもらいました。これはとても人気があって欲しいという人が多かったのですがプロトタイプであり認証も取っていないような物ですので泣く泣く断念しました。またstudio yumakano / 狩野佑真がデザインした錆に着目した展示は大変人気があり、多くの質問がありました。

今年のサローネの展示の中でかなり事前の注目を集めていたIKEA FESTIVALが前の会場という事もありサローネ開幕から閉幕までまったく人が途切れないというものすごい人の入りを記録しました。有難い事なのですが簡単に言うと展示シフトの時はかなり疲れるという事です。いつもと違い今年はエンヤは見て回る年でしたので僕が不慣れな英語でのプレゼンをするという過酷極まりない展示となりましたがおかげでまた少し英語が成長したような気もします。生まれてこの方一番英語でたくさんの人とお話した気がします。またこの人の入りを予想できておらず、500枚ほど持っていった名刺が足りなくなる事態が起きてしまいました。念には念を入れておかないとだめですね。ここは今後の課題として。

DEEPER PAPERプロジェクトは今回はまず拡げた段階です。最も拡げた状態での展示はexperimental creationsの展示趣旨です。次はこの先にどんなプロダクトをデザインするのか。その段階へと移行したいと思います。年内くらいに何かプロダクトとして発表したいし、簡単な物は自分達で生産して販売してもいいなと思っています。こういう新しい視点に気づく機会を与えてくれた上野さんに感謝です。また機会があればぜひご一緒したいと思いました。そしてサテリテと違う優しい空気感の中で想いは紙飛行機乗ったかのように軽やかに、そして何事もなく無事に閉幕。

例年帰国前にどこかで道草して帰るのですが今年は昨年テロの影響があってあえて避けたParisに行きました。整った美しい街並みと良い天気、濃い飛行機雲が印象的で展示の疲れも吹っ飛ぶような楽しい3日間を過ごし14日に帰国しました。また日常が始まりますがこの春の欧州出張で得た物を自分達の街に還元するといういつもの気持ちは何も変わりません。

秋には地元大阪で展示会があります。そろそろ詰めていかないといけませんね。

Tweet about this on TwitterShare on FacebookShare on Google+Share on TumblrDigg thisPin on PinterestShare on LinkedIn