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昨日海外出張からの帰路、飛行機に揺られながらにはっきりと思い出した事があります。

 

9年前の9/30に前職を退職し、翌日10/1に独立しました。つまり独立して9年が経ちました。

振り返れれば28歳になる直前でした。次の一言に尽きますが「若かった。」

だからできた気がします。

 

「大きな失敗をしてもやり直せるうちに何かやってやろう。」

 

そんな風にしか考えず被雇用という立派な大屋根から飛び出して大雨に打たれる事9年。特に2008年の秋といえばリーマンショック直後でもあり、世界は混乱していました。まさしく豪雨で、自分のことなど誰も気にも留めないくらい世界は冷たかった気がします。

 

自分には立派な傘はなくただひたすらに消耗していきましたが、そんな中でも親友や心ある大人が自分にチャンスを与えてくれ、生活は安定し、20歳を過ぎた頃からの夢であったミラノサローネに4度出展する事もでき、それがきっかけで夢見ることになった海外の会社との仕事も今では多くさせてもらうことができて、素晴らしいスタッフやアルバイトやインターンシップにも恵まれ、ふと大切な日を忘れそうになるくらい光に満ちた充足の日々を過ごしています。

 

最近考えることは環境を設計する事の大切さです。自らに課した量だけ自分は伸びる。そこに年齢も性別も学歴もバックボーンも関係なく、ただ「やるかやらないか」だけだと思います。飛び込む勇気を押さえつけるネジだけは前職のデスクに置きっぱなしのようです…。いや、「何でもします。アルバイトでも何でもいいので入れてください」と前職に丁稚で飛び込んで退職した最初の会社のデスクに置きっぱなしかも知れない。あのネジはどこに行ったんだろう。16年間見つからないからきっと誰かに捨てられてしまったんだろうか。

 

少し話を逸れますが、私は読書が苦手です。今でも苦手項目の3本の指に入ります。そんな私が今年に入り狂ったように本を読んでいます。もちろんずっと苦痛なわけですが、いいこともたくさんあります。これほどスマートに知らない世界を知る事ができるツールなんて他にはない。

 

少し前に中国のクライアントとカジュアルな夕食会で自分の独立してからのことを話しました。そうすると相手のディレクターは私を論語に出てくる一説に例えました。とても褒めてくださったのですが、勉学が足りていない私はその真意がわからなかったので、今まさしく日本語で解説されている完訳論語を読んでいます。もちろん苦痛であることには違いないのですが、それを今読む意味性がある為に、得るべくして得ています。そうして苦痛の果てに想うことは、知らない世界と言うのはなんと楽しく、いつも素晴らしいのだろう。

 

経営者の1年は被雇用者の7年とある本で読みましたが、それが本当だとしたならば今の私は63年の雇用の末にたどり着いた経験値なのでしょうか。まぁきっとそんな事はないと思いますが未だに気持ちに張りがあり、見た事の無いものを見るような目で現実を見つめては問いながら問答をカタチにする。これはこの人生にしか見えなかった特別な景色なんだと思うし、デザインがここまで自分の手を引っ張って来てくれたんだと思うと、自分にとってデザインは正しいことを諭す親のようであり、間違ったことを正してくれる親しい友人であり、次の検知を与えてくれる先生であり、いつも向き合い続けないといけないもう1人の自分自身だと思います。

 

何気なく始めたとは言え15歳から22年間続けているデザインは天職かどうかを問うまでもなく、自分にはこの選択肢しか無く、向き合い続ける事で生きていける無くてはならない物なんだと振り返る事ができます。

 

そうして今日から独立10年目が始まると思うと、あの秋の斜陽に晒されて辛い思いをしていた自らを少し励ましてあげたいと思う。そして言いたい。

 

「足は止めるな。進み続けろ。そのうちに光りで何も見えなくなって大切な節目の日すら忘れかけるから」と後ろから背中をバーンと叩いてにこやかに励ましてやりたい。

 

やり直しが効かないところまで来たような気もしますし、まだまだ全然駆け出しな気持ちもありますが、変わらない事は自分自身の失敗は怖くないことです。飛び込んだら意外といいことだらけの9年間だったから恐れは無いし、あわよくばあのネジは2度と出てこないでほしい。

 

もしあと1年ちゃんと自立して生き延びることができたならば、何かしら粛々とお祝いしてもいいのかも知れませんが明日は何が起きるかわからないのでやはり日々淡々とやるのみです。締めてかかります。

 

そうしてその次には自分や自分のチームが誰かの何かの背中を押すのに欠かせない、そうする事で自分が成り立ち続けられる10年にしたいですね。

 

2017年10月1日

江口海里

 

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