香港を彩る白銀の光。

11/29-12/2まで香港に行ってました。
アジア圏に社会的な影響を与えたプロダクトデザインに贈られるデザイン賞Design For Asia Awards(通称DFA awards:簡単に言えばアジアのグッドデザイン賞)にて、ユーイング(大阪市)と共に取り組んできた家庭用水耕栽培機Greenfarm Cubeがシルバー賞を受賞し、その授賞式に行ってきました。
授賞式と言えば5年前の2011年、震災の年の秋に六本木ヒルズでLG Mobile Design Competitionの授賞式以来でいつまでもなかなか慣れない場所なのですが光栄な事だと思いましたので参加する事にしました。
ゆっくり香港に行ったのは10年ぶり。前のデザイン事務所で今回と同じくアジアのデザインイベントBusiness Of Design Week(通称bodw)で初めて行ったのですが、久しぶりの香港はやっぱり大好きな街で文化的な物と先進的な物、アジアらしさと欧州らしさが混ざり合うことで独特のカオスを生んでおり、その活気や熱のようなもの、また独特の空気感がとても刺激的でした。
授賞式はざっと2000人は入るであろう大ホールで行われ、審査員がプレゼンターとなり1人1人にトロフィーを手渡して行きます。プロダクトデザイン部門のプレゼンターは香港に拠点を移し、もうすでに香港のスターデザイナーとなった100人の日用品展にも参加してくれたMichael Young(マイケルヤング)氏。
100人の日用品展の御礼をする為に香港に行く前よりアポイントを取りながらもなかなか多忙なので会えるかどうかわかりませんでしたがまさかこういう形で会える事なるとは思ってもいませんでした。偉大なデザイナーから祝福の言葉と共にシルバーに輝くトロフィーを頂き…。
なんて書いていますが正直壇上での事はあまり鮮明には覚えていません。マイケルと刹那的にどういう会話を交わしたかもほとんど覚えていませんし、自分がちゃんとした英語で話せていたかも覚えていませんでしたが、非常に眩い瞬間であった事には違いなく、数多くのデザイナーやそのプロジェクトのディレクターと共に煌びやかな香港の一夜を彩る光となった想い出深い一年の締めの海外となりました。
一夜明けて翌日から改めてbodwを拝見。素晴らしい展示を見つつ、bodwならではの素晴らしいトークセッションを聞きに行きました。Michael Young、Nicol Boyd & Tomas Rosen(Office for Product Design)、Paul Gardien(Philips Design)、Chau Nguyen(Lunar)、Winy Maas(MVRDV)、Tim Brown(IDEO)、Patrick Blanc、Ahn Sang-soo(Pati)などが1人30分程度のトークの後、10分程度の質問を受け付けるという形式で非常に熱いトークを聴く事ができました。
彼らもまたこのミクスチャーな街に新たな光を与え、熱を帯びさせる恒星のような存在だと思いましたし、そういう熱のコミュニティによりアジアのデザインハブである香港は成り立っているのだと思いました。DFA awardsは香港、中国、台湾、シンガポール、韓国、マレーシア、ベトナムなどのアジア諸国が非常に強いアワードで、アジアの交易の軸である香港にぴったりだと思います。その中で日本の中小企業と取り組んできた水耕栽培機が表彰された事は、これからの時代のデザインを世界に広める為の橋頭保になる気がしました。
日本同様にアジア市場には水耕栽培機はとても珍しく、シルバー賞(3席)でありながらも展示スペースではとても注目を集めていました。世界はとても純粋な目でデザインや物を見ています。香港もデザインのいい土壌が耕されている気がしました。
僕らのデザイン事務所は、東大阪の町工場から世界一の白物家電のメーカーまで幅広いクライアントがいます。我々は事業規模や既存ブランド、場合によっては国を気にせず純粋に良い物を生み出し、そこから新しい文化創造をデザインでチャレンジしたいと思いながら事務所を続けてきた一つの大きな結果がここに生まれたのではないかと思いました。
一般的にデザインが必要な世の中になり、どれだけ小さな会社でもデザインにチャレンジできる状況を作らないといけなくなりました。これまでの豊かさとは違う次の価値観のシフトの成功を、デザインスタジオが導けるかどうかがこれからの文化創造をする上で最も重要なミッションだと考えています。そうした中で一緒に物を作っていきたい方、活動したい方と共に次にチャレンジしていきたい。
賞が全てではありませんが、黄金や白金に輝く光に次はなれますように。