東は東の風が吹く。

9/7-10に中国の上海で行われたCHINA INTERNATIONAL FURNITURE FAIR(CIFF)内のEAST DESIGN SHOWというイベントに招待され、今年ミラノサローネに出展したmosaicシリーズを展示してきました。
上海自体は昨年初めて訪れ、日本以外のアジアのデザインウィークを上海にて楽しんだのですが一年後に自分が呼ばれる事になるとはその時は思っていませんでした。EAST DESIGN SHOWのディレクターが今年のサローネサテリテを見て招待したようです。他にも大畑五月さんやダイハツの社内デザイナーで構成されるデザインユニット今人(イマジン)さんも参加されていました。オランダやシンガポールからの招待デザイナーも多く、とても国際的な展示スペースでした。
このイベントはまだ今年で二回目ですが、非常にポテンシャルを感じています。サテリテを意識したような作りですがそれぞれのブースはサテリテよりも広く、また前述にもある通り世界中のいいデザインを招待枠を設けて展示する事でその全体のクオリティをアップさせています。来場者のほとんどは中国、アジア圏の方で話す言語はほとんど中国語ですので日本やその他の英語圏のスタジオには少し難易度が高い展示会かも知れませんが、来場者も途切れる事なくまたジャーナリストやバイヤー、ブランドのディレクターも多く来場されました。
私はインテリアデザインの中心はずっと欧州にあると思っていましたが、最近そうでもないなと思うようになってきました。もちろんそういう歴史はしっかりあり、未だにリーディングカンパニーの多くは欧州に存在しますが、ミラノと上海両方の展示を終えて個人的に思う事は、アジアには着実に大きなマーケットができてきており、そのマーケットに対するデザインやデザインを中心とした文化はアジアならではの昇華がはじまっているという事です。西の中心はミラノ、ケルン、パリ、ストックホルムだとすれば、東の中心は、香港、台北、上海、シンガポールという国際的に「開かれた街」だと思います。国際的ですが決して欧米的ではありません。また東京はどうかと言うとインテリアデザインというよりデジタルアートやメディアアートの側面がとても強く海外で認識されているので、インテリアだけを見ると先ほどの四つの都市には少し遅れているように感じています。実際にIMAGINE TOKYOというイベントをTENT LONDONで見かけた事がありますが、これはデザイン以上にしっかりとメディアアートの展示会であり、そういう側面の「東京らしさ」を意図してブランディングしとしたなら大変成功だと思いますが、インテリアとしての昇華のされ方の差はとても強く感じています。
欧州とアジアでは大きくライフスタイルが異なり、衣食住のほとんどに大きな差異があります。マーケティング的に見ると欧州らしさを憧れとした世代から、自分達のアイデンティティを大事にしようと考える世代へとマーケットが移行したようにも思えます。一昔前までアジアらしい家具というとあまり洗練されておらず敬遠される物も多かったですが、最近のアジア家具の完成度やデザインセンスは目を見張るものがあり、欧米化させずにその地域の伝統やライフスタイルを大切にしようという気持ちが感じられます。またそれらをコンテンポラリーにミックスされ新しいアジアングローバル家具(のような曖昧で魅力的なもの)が生まれてきていると思います。そして自分達はその一部分に介在しているのだなぁと今回の展示で強く感じました。
日本人らしさとはなんでしょう。ヨーロッパ人らしさとはなんでしょう。最近はその垣根はどんどん取れてこの5年くらいで一気にデザインは混血化されてきているように思います。私もあまり意識しなくなりました。アジアが欧州を習ってデザインをしていた歴史と欧州が東を見てテイストを西らしくトレンドとして取り込んでいるなんて例もあります。確かに言える事は、アジアの現在は地域のアイデンティティを大切にしながらも別のエッセンスを取り込む事で独自の魅力を引き出してきている。これがこれからのアジアマーケットなのではないかと思います。東は東の風が吹いていますね。
照明が落ち、撤収の準備を始めようとした時に僕らが前からずっと一緒にプロジェクトをしたいと渇望していたあるアジアを代表するブランドのディレクターが話しかけてきてくれました。その刹那の出来事は、東の風によって心が燃える想いであった事はイメージするに容易いですよね。