消毒液スタンドをデザインしました。

とある夏の日にFACEBOOKで、以前知り合ったプロダクトデザイナーの土井智喜さんから、感染症対策のプロダクトデザインの展示会「NEW NORMAL NEW STANDARD」を東京でしようと思っていますが、いかがですか?とお話があり大変興味深い展示会の企画でしたので参加を決意しました。

その時にパーテーションもいくつか検討しましたが、他の方もパーテーションをすでに開発していることと、消毒液スタンドには結構未知の可能性があるのではないかと思い、他の提案も出した上で消毒液スタンドを展示することにしました。

感染症対策はかなり未知数のマーケット。

今回のコロナウィルスはSARSなどよりも全世界的に蔓延し、世界中で多くの人が無くなっています。ただの風邪という認識を持たれている方もいますが、構造は風邪に似ているかも知れませんが、その実害と感染力、また潜伏期間の長さなど、相当やっかいなウィルスであることから、人類がこれを完全に克服するには最低でも数年、もっと長い時間を使って達成されることから、当面このウィルスと共存しながら生きていくという「NEW NORMAL」という考え方が生まれました。

NEW NORMALは文字通り新しいノーマル(日常という意味が多く含まれているように思いますが)という言葉がまず出てきました。つまり新しいふつうが、今ふつうではない速度で生み出されています。急造されたという表現が正しいと思いますが、巷のいたるところに急造されたパーテーションや消毒液スタンドを見て、人々のバイタリティを感じると共に「そろそろ次の次元になる」という認識を得て「今の状況がふつうになったとき、消毒液スタンドはどうなるのだろう」という問いに対する回答が今回のデザインです。

感染症対策は今最も求められており、日々すごい速度で社会に実装されていますが未知数のマーケットに対して、その次のアップデートの為にこれはデザインしたという意味です。

街で消毒液スタンドを見たり触ったりして思うこと。

消毒液スタンドは、もうすでに様々な内容のものが生み出されています。足で踏んで手で触れない物もあります。また電気を通してセンサーにより手をかざすと液が出る物もあります。これらは人間の行動に基づいたすごく素晴らしいプロダクトである反面、機構部品の故障リスクも停電時に使えないなどのリスクもあると感じました。ニーズがあるのでこれらは受け入れられ続けると思いますし、自分自身も将来的に今回デザインしたもののアップデートとしてこうした方向性のことも視野にいれつつ、まずは一番シンプルに、一番丈夫で、何より人々の美観を満足させて感染症対策というネガティブな対応を「これなら置きたい」と思えるものにしたいと思いました。

また消毒液そのものは高価なので、運悪く盗難ということもあるかも知れませんし、未だに入手は難しい貴重なものなので貴重なものとして消毒液を扱いたいということ。また街中で台から落下し周囲に飛散してしまった現場を見てしまったことも、今の構造のアイデアにたどり着いた要因だと思います。

使用性の観察はいつだってイノベーションの種です。

回答その① 基礎形状について。

外観デザインは、四角柱をベースにやわらかい角の取れた形状としました。その理由はNEW NORMAL時代に消毒液スタンドは、まずエントランスという整った環境下に置いて、圧倒的に空間調和する必要があるということ。つまり、空間を構成する形状である平面や直線を基調とすること。そうした時に角が立っている形状も考えましたが、角が立っている形状だった場合、消毒液スタンドは子供の背丈くらいの高さがあるため、ぶつかる恐れがあるので長手方向の角には大きな丸みを付けていること。

ここは重要なポイントで、本来は異形パイプと呼ばれる鉄パイプをカットして作る構想でした。ただ異形パイプというのは肉厚が薄いものは角が立っており上記の理由により商品上危険になること。また角が丸いものは肉厚が厚くなり、コストまたは重量が重くなり、商品として成り立ちにくくなること。最適解を探した結果、生産をお願いした摂津金属工業所の方が板からまげて作るという方向性を検討してくださったこと。この手法についてはまた別途お話しますが、とにかくこの基本形状を作るために様々な検討が材料を選ぶ段階で検討していたこと。

素材や生産方法を知ることは、デザイナーのデザインの領域を拡げること。

回答その② 薬品としてのラベルが丸見えになっている問題について。

消毒液は薬品であり、医療現場が主に使われていた物です。それらが急に街中のいたるところに配置されはじめましたが、ラベルそのものはそのままなので、とても違和感があり、NEW NORMAL時代相応しくない状態が続いています。ラベル側も近々美しいラベルデザインを施した消毒液が出てくることが想定されますが、そうした消費財側のデザインに依存しない消毒液スタンドをデザインしようと思った時、ラベルを隠してノズルだけ上から出る構造の物はどうかと考えました。

今回の消毒液スタンドは、そうした機構を持つことで淡々と仕事をこなすプロダクトに徹し、空間を美しく維持し、また生活者も使用性、美観に対して抵抗のない「公共物としてのデザイン」を念頭に考えました。同時に落下や盗難という問題をクリアでき、一石三鳥のアイデアとなりました。

問題はいつも複合的ですが、それらが同時に解決できるアイデアがひらめいた時、それらは思想としてのデザインに成り得ます。

回答その③ 多種多様な消毒液がある問題について。

消毒液は今すごく様々な物が出ており、それぞれに容器サイズはノズルサイズ、またアルコールタイプ、ジェルタイプなど多種多様な状態になっています。これらを決まったサイズフォーマット(この場合は特に高さ)に納める場合、内部に機構を設けて様々なボトルが搭載可能となりました。※予めお伝えしますが、今回はいくつかのアイデアに対して特許を出願しています。

一番街で見かける消毒液は、個人的にはアルボナースの1Lタイプだと思っています。これは容量も多く、利用率も高いことからこの商材をベースに考えつつ、これよりも底面が大きいものや異形のものもある程度まとめて装着できる構造にし、利用者が利用できる消毒液の幅を広げました。

また使用者は空間の管理者であることから、ゴミ袋やトイレットペーパーのように「その場所に次を備蓄しておくと楽になる」だろうと思い、本体内部には一本ないし二本をストックできる構造になっています。交換の手間が置くだけのものよりかかるぶん、ストックを設けることで利用者負担を減らす試みです。

使用者の行動を読み解き、そこに良い流れを生み出したときに、美しいプロダクトの骨格が生まれます。

回答その④ 外観デザインから見える、転倒リスクについての解決策。

このデザインの一番特異点は何かというと、多くの消毒液スタンドに対して底面積が小さい(つまり倒れやすそう)なことにあります。その分外観デザイン上はとてもスマートに見えます。

そこにも対策が施されており、底面には錘(おもり)が装着できるようになっています。また2Lのペットボトルも入るサイズで計算していますので、さらにそこに2kgの錘を足すことができます。

またNEW NORMALが長く続く、あるいは本当に未来がNEW NORMALのままになった場合、空間の管理者はこの製品をアンカーで地面に固定することもできます。そうすれば錘を入れなくても転倒することはありません。

年内発売を目指して、現在鋭意開発中です。
生産をして下さる東大阪市の摂津金属工業所様と現在鋭意制作中であり、年内にはお届けしはじめることができると思います。8月に発案し、12月に販売するというのはプロダクトデザインサイクル上は異常な速度だと思いますが、これもいくつかの条件が整った上で、さらに生産委託先の町工場とデザイナーの熱意があれば可能だろうと思います。この速度感も町工場の魅力だったりします。

はやく皆さんにこの商品をお届けできるようにしたい。そういう気持ちで今進めています。今しばらくお待ちください。

また東京での展示会「NEW NORMAL NEW STANDARD」は10/10に終了しましたが、実は地元大阪で10/29~開催することになりました。場所は私の事務所の一階にあるギャラリー「page gallery」です。他のデザイナーの素晴らしいプロダクトも並びます。

もし宜しければぜひお越しください。

大阪展
会期 2020.10.29(木)- 11.4(水)12:00-19:00
会場 Page Gallery(KAIRI EGUCHI DESIGN 1F) 542-0066 大阪府大阪市中央区瓦屋町2丁目14-8
入場 無料(事前登録不要)
主催 NEW NORMAL, NEW STANDARD実行委員会
特別協力 荒川技研工業株式会社、株式会社 DOUBLE-H
協力 日本コパック株式会社、株式会社摂津金属工業所、未来テクノ株式会社、大光電機株式会社、アイティーエル株式会社

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