SATELLITEへふたたび⑥

随分間があいてしまいました。サテリテに出展したものが反響良くアメリカ、イタリア、UK、アジア諸国のメディアに多く掲載され、その対応と次の出展に向けた動きをしていた事とあとツムテンカクというアートイベントにてはじめてディレクションを行っていたのでゆっくりこの春の欧州出張を振り返る時間がありませんでした。少し落ち着いてきたのでゆっくり振り返りながらブログにつづりたいと思います。
サローネ再び⑥ 4/12日 搬入初日
ロンドン同様に朝は相変わらず早い。安定の時差ぼけです。まだ夜が明けきっていない時間にいつも目が覚めます。昨晩は着いたのが遅かったためスーパーに食材を買いに行く時間もなく、朝食はカンタンに済ませます。
サテリテは搬入の日程が三日間あります。最大三日間使って良いという事です。4m×4mという一番小さな小間を借りているので三日間もかからないと思い、二日間時間を取っています。トラブルが潜んでいてもギリギリ対応できる時間だと思っています。海外出展は一泊増えれば当然滞在するための費用がかさむのでこのあたりの見極めも重要になると考えます。
搬入は最大五人まで出来ます。それ以上は通用パスを発行してもらえないのですが、16平方メートルの小間であれば五人は多いように思います笑。という事でメンバーが余ってしまっています。パーティAは僕、スタッフのENYA、試作をいつも作ってくれている八代さん、ENYAのクラスメイトの中塚君、僕の後輩の佐々木さんというメンバーで搬入し、田中さん、ジン君はスーパーの買出しに行ったりと生活面を整える作業に従事してもらうことにしました。
という事でパーティAはあらかじめ予約していた昨日リナーテからアパートまで送ってもらった同じクラスのチャーターバスに乗り、一路Fiera会場へ。Fieraはミラノにあるイタリア最大の国際展示場で、東京ドーム11個分の広大な施設です。その中でもサテリテは一番端っこで行われており、鉄道の改札からサテリテまで歩くとだいたい1.5kmくらいあります。それだけでも時間と体力をロスしてしまいます。また荷物が多いので鉄道移動は困難だという事を三年前に学び、今回はそこまでチャーターで行くことにしました。コストはかかりますが、五人全員と荷物を乗せる事ができてしかも搬入口から車で入り会場のすぐそばまで載せてもらえるので結果的にこちらのほうが良かったのではないかと思います。
Fiera会場は東京で言う東京ビッグサイトではなく、幕張メッセなんです。つまりRhoという名前のミラノ郊外にあり、市内からは電車で30分はかかる場所にあり遠いことを予め知っておくと良いと思います。ちなみに鉄道でいく方法は地下鉄と国鉄があり、地下鉄が比較的乗りやすいですが会期が始まるととても混むので、まだ国鉄のほうが便利かも知れません。国鉄はP.Garibaldi駅[S5、S6だったと思う]から一本でいけますが本数は限られます。地下鉄は赤線[M1]でいけますのでその途中のCadornaやLoreto、P.Veneziaあたりに宿泊拠点があると他の会場にも行きやすくなるので良いかと思いますが、僕らはほんの少しだけ土地勘のあるZara付近に宿を取りました。次回はCadornaあたりに宿を取ろうと思います。
さて搬入です。二度目というのはとても素晴らしい事でだいたいどういう段取りで何をどう進めて行くのかというのがわかるわけです。ある程度予測できるし、足りない物を買いに行く場所もわかっています。今回日本から持ってくるかどうか悩んだ物が一つあります。それは脚立です。というのもサテリテのブースは高さ3mあります。そこにあらかじめ施工会社にオーダーしていた照明が取り付けられているのですがその角度や絞り方、壁面を塗るのであれば養生しないといけませんし、とにかく高所作業が多いわけです。手に入れなければならない脚立も割と高くまで作業できるものでなければなりません。脚立が必要なブースは僕らだけではなく、サテリテ出展者全員が実は脚立が必要なのです。ですので誰かが使っている物を交渉して借りたとしてもそれはその人が使いたい時の為に入手した物なので長く借りれなかったりペンキで汚したりもできないわけです。ただ日本から持っていくのはかなりナンセンスなのですがギリギリまで悩んで結局やめました。どこかにあるだろうと。
Fieraにはホームセンターがあります。僕らのブースの壁面は白にする計画なのでまずはそこに買い出しに行きます。サテリテの壁面は正面はべニア、となりのブースを隔てるのはキャンバスです。背面のべニアはガタガタで目地が見えていますので、それを埋めるパテ、小手、ペンキ、ローラー、ペンキを入れるトレーを購入しようとしたのですが、なんと脚立が売っています。しかも€89.00-。安い。曲がりなりにもモノづくり従事者なので物を見ればだいたいそれがどういう構造なのか理解できるのですが、€89.00-というのはなんとも危なっかしい構造になっていました。これまで数々トラブルはあったものの、けがをしたりお腹を壊したりはしませんでしたが「いよいよ来たか」と多少震えました。脚立に乗る事や高所で作業は平気なのですがそれはあくまでちゃんとした脚立である事を前提としています。このギリギリの設計(渡しの部分が細いワイヤー仕様)の超軽量脚立はさすがに怖かったですが、背に腹は代えられずそれを購入。ちゃんとした物は€300.00-だったので予算オーバーでした。
サテリテのブースは床面もオーダーできます。養生されたビニールがあるのでそれを貼ったままそれ以外のセットアップを終わらし、最後にはがします。大体全体レイアウトを確認→壁面の養生→壁面の塗装→各種サインの設営→作品の陳列→照明の設定→作品にカバー→入口にマスキングテープを貼るという具合の順序だと思います。壁面の目地にパテを打ち、乾燥している間にペンキと養生を同時に行います。三年前は二人でそれをやっていたのですが、今回は五人で行ったので特に問題なくサクサク進みます。設営状況をタイムラプスで撮影する余裕があるくらいなので二日も必要なかったのでは?という具合にどんどん進みました。
そうそう、Fiera内にはカフェがありサンドウィッチやパニーニ、コーヒー、ドリンク類はそこにあります。前日特になにも食材が無かった為お昼はそれを買いに行きましたが日本も同じですが会場価格というのがあり、とても高いです。特に円安の今ではサンドが€5.00-(700円近く)します。これは痛手になりますので可能であれば拠点のそばのスーパー[Esse Lunga]や駅の自販機などで買うといいでしょう。という事で大阪であればランチも食べれるんじゃないかと思われる高級サンドを食べながら、三年前のトラブルがなんだったのかわからない感じでブースはできあがっていきます。
今回の設営は照明器具があります。これは初の試みですが、ブースに延長コードを引く事ができ、また使用電力も使う電力をオーバーする場合は追加できます。もちろんどちらも有料ですが妥協なきブース設営の為に延長コードは二本、電力はアップさせておきました。ただ照明器具などの通電する物を展示する場合に気を付けないといけないのは日本の電圧と欧州は違うと言う事です。当然灯具もそれに合わせて試作を作らねばならず、仮に火事になったらとんでもない事になります。また欧州はLEDが主流でよくて蛍光灯電球までしか売ってません。白熱球は売ってないのでもし白熱球で展示したい場合は持っていく必要があります。あと電圧も違うので灯具が対応していない場合は変圧器をかけましょう。変圧器は三倍見ておかないといけないので変圧器のキャパが120Wの場合、40Wの電球までであれば長時間つけられると電気量販店の店員さんが言っていましたので、変圧器を照明器具分持っていきました。当然プラグ形状もイタリアに合わせなければなりませんのでご注意ください。
さてある程度のセットアップが完了してきたのですがどうもその変圧器が見えて困る。あと自分のブースから隣を見るとキャンバス地のせいでとなりの照明器具の光が漏れていて、それを隠す必要がありました。ここからが交渉です。まず隣に光が漏れているのでそれを隠してほしい、でもその下のスペースは空いてると思うのでこっちでその漏れているのを隠すのでこの下に変圧器隠してもいい?と交渉してみました。向こうも快くOKしてくれました。こうして隣のブースにこちらの変圧器を隠す事ができ、展示はほぼ完ぺきな物に。現場対応力とはすばらしい。
ある程度終わったところでまわりのブースが脚立を借りに来る。よくある情景だし、自分たちが使わない時は貸してあげるのがいいと思う。自分たちも借りる時があるはずだから。周りの日本人のブースにも配慮しながらもし貸し借りできるものがあれば連携するといいと思います。サテリテは日本人出展者が多く、今回は8組くらい居たように思います。せめて同じ国の人なのだから自主的に助け合いましょう。
ということで初日の搬入終わり。行きはチャーターで来ましたが帰りは電車。地下鉄にのり帰宅する。地下鉄チケットは€1.50-という一回券というチケットがある。これを使えば90分だか地下鉄とトラムが乗り放題になる。ただし気を付けないといけないのはFieraは特別料金がかかり€2.50-必要になります。入場の時にチェックなのでどのチケットを持っているかは結局わからないわけですが、時々抜き打ちで駅員が確認する事がありそこで€2.5-持っていなければ罰金€25.00-くらい?あるそうです。
駅にはサローネやサローネサテリテの広告が貼られています。街全体で盛り上げるお祭りなんだなぁと。ミラノという街は日本の街からすると都会ではないし、そんなに大きくもないと思う。だけどこうやって世界から30万人近く来るイベントをするというのは、街全体がそういう風にならないと実現しないのだろうと思った。全員の共同作業なのかも知れない。中にはサローネが嫌だというミラノの人もいるでしょう。そういう事もちゃんと理解したうえで参加しなければならないと思いました。
アパートに帰ると買い出しチームのジン君と天ちゃんが食事を作ってくれていました。ありがたい。安定の時差ボケ野郎はソファで寝てしまい、メンバーから顔に落書きされるというベタなオチに。朝になってあれ?ってなったのは言うまでもありません。