SATELLITEへふたたび⑨

また随分空いてしまいました。無沙汰は無事の便りと言う事です。
4/15日 ミラノサローネ二日目
早めの起床。三年前は雨のサローネだったけど今年のミラノは天気がいい。毎日€5.5のパニーニは経済的に良くないということで今日はメンバーがお弁当を作ってくれた。こういうサポートがあってこそですね。
サテリテには二つのアワードがあります。サテリテが主催で行うサテリテアワードと、ドイツのデザインリポートという雑誌が行うデザインリポートアワードです。今日はそのサテリテアワードの授賞式。サテリテアワードは出展者の中から有志で参加する事ができ、事前に作品のコンセプトと写真を提出します。サテリテが始まると作品を特設ブースに展示して審査が行われます。
参加者が多いため朝から出展者はそわそわ。何を隠そうこのアワードを受賞すると世界中のジャーナリストがブースに訪れ、受賞作は世界中に発信されます。そこからそのプロジェクトはさらに大きく発展する事がわかっているため、受賞したい気持ちが強いのです。日本人では過去に田村ナオさんやYOYなどが受賞しています。こう綴る僕もそれを目指す一人ですが。
さて、セレモニー会場に人が集まります。みんな緊張。結果は…。
1st prize Xuberance(CHINA) http://www.xuberance.org/
3Dプリント技術による雲をイメージした照明のシリーズ。
2nd prize Scottie Huang(TAIWAN)
Kinectを使った笑顔で鏡の前に立つとタンポポがさくインタラクション作品。
3rd prize Viktor Legin(AUSTRALIA) http://www.copper-id.com/
モビールのような軽さで動く照明。
Special Mention(特別賞) 
Documentary Design(GERMANY)
セラミックでできたスピーカー。コミュニティデザインの要素も含んでいる。
Out for Space(GERMANY)
アジアの籐(ラタン)を使ったコートラック。  http://www.outforspace.com/
アジア勢強しといった印象。Xuberanceは企業ブースさながらのブースデザインと、圧倒的な3Dプリント技術、造形美などサテリテの枠を超えたレベルでした。ブースは最小の小間で2500ユーロします。Xuberanceのブースはそれが四つ分なので1000000ユーロ(出展料だけで130万円程度?)です。そのスケールの違いに中国の勢いを感じてなりません。
また二位は台湾のインタラクションデザインの作品。中国はどうなのかわかりませんが、台湾や韓国は海外出展の際に国が資金を支援します。そうしてしっかり結果を残して国内の若手デザイナーを世界に排出し続けています。そして世界的に育ったデザイナーを起用して国内の産業も活性化させるというポンピング機能がしっかりと働いてきているような気がします。日本にもそういう若手支援は必要だと思いますが、今の現状ではそれは無い為、若手が世界で戦えるチャンスは自ら出展料を支払わなければならず、それができない場合はこの舞台に立つことすら難しいのです。僕は運よく今こういう事に参加できるくらいの資金を仕事によって稼ぐ事ができていますが、これは特別な事なんだと改めて思いますしいつ参加できなくなるかわからないので今をしっかりやる必要を再確認します。
海外の展示会に来るといつも心が澄む事があります。それはScottie Huang氏が受賞した時、台湾のデザイナーたちは自分たちは落選したにも関わらず自分の事のようにこれを喜びます。日本ではそういう事をあまり感じた事が無いため、仲間意識というものはいつも海外で学びます。でもこれは日本にも必要な事ですよね。今の日本はそれが自然とできていないかも知れませんが、このブログを読んで共感してくれた方は(おそらく私よりも若くキャリアの浅いフォロワーが多いと思って言います)ぜひこういう状況でもしっかりと受賞者を称える事をしてほしいと思います。デザインは影響を受けるし作ったものは誰かに必ず影響を与えます。自分だけで行っている物ではなく、時代性がそのデザインを生むための刺激をくれているのです。だからこそ褒め称え、認め合う事で良い時代性を紡いでいけるのではないかと思います。気持ちがオープンになれば、世界各国のデザインで一つの旗を紡ぎだせるはず。その一歩は受賞者に心から送る賛美の拍手からだと僕は思います。
清々しい空気感の中、二日目が過ぎていきます。様々なジャーナリストの取材もブランドのディレクターも知り合いも多数来てくれます。エキサイティングな現場です。三年前とは全然違う確かな手ごたえを感じています。経験値は蓄積されるものです。成功から学ぶ事は少ないかも知れませんが、失敗からは何かしら学んでいるはずです。だからこそ二回目は初回から結果が出るのだと思います。無事に今日の展示も終わり、今日は外へ出ます。サローネ期間中はほぼ毎晩どこかでレセプションパーティをしています。今日は神戸芸術工科大学のデザインチーム[DESIGN SOIL]が展示しているVENTURA LAMBRATEへ行くことに。
Fieraから地下鉄でLAMBRATE FSへ。外を見て回っているルームメイトたちと合流する予定ですが、さすがに一日立ちっぱなしだったのでカフェで少し休憩。LAMRATEエリアは今若手デザイナーがサローネの中で最も出展したいエリアです。すごく先鋭的なスポットで、昔はTORTONAやSATELLITEがそうであったようにインディペンデントな空気感がそこにあります。メンバーと合流し、DESIGN SOILに行くことに。明らかにTORTONAとは違うストリートな雰囲気に、若さや表現に対する強い欲求を感じ、その熱の中に知った顔を発見します。DESIGN SOILのメンバーははじめて会う学生がほとんどですが、みなさんとても熱心に自らの事を話してくれます。また自分の神戸の教え子で今はスイスのECALに居る岩本君もそこに居て久々の再会を果たしました。国が支援しなくても学校が支援してくれるパターンもありますね。こうして次代を担うデザイナーたちがすこしずつ世界と触れ合うのです。自分にはこういう道はありませんでしたが、いつかはその道も作れるような人になりたいし、また自らもまだまだ挑戦者として海外で勝負したいと思います。
色々熱く話し合っている間に時間が来てしまいVENTURA LAMBRATEから追い出され、しかも終電もなくUBERでタクシーを手配し帰宅。
だいぶこっちの時間になれてきたかな。