TENT LONDONというところ③

更新が遅くてすみません。
9/17(水) 搬入2日目と散策
相変わらず早く起きる。まだみんな寝てるので朝を効率的にする為に朝食を作る。IHには少し慣れた。わかったことはお湯が湧くのは遅いのでコーヒーメーカーを使ってお湯を作る方がいいという事。Mickはスープを飲まないのかスープカップという物が無い。マグカップすら見当たらないのでスープを作っても持ち手のついたグラスに入れなければならず、すこし見た目がアレなわけですが二日連続でこれに注ぐ。
今朝のメニューは昨日より少な目。スピナッチと生ハムのサラダ、ベーコンエッグ、ハードチーズ、野菜のコンソメスープ、パイナップル。まだちゃんと日が昇っていないが今日をスタートする。寝坊ゼロな所は素晴らしい。早く行って今日の本当の目標である「搬入」をきっちり終わらせないとね。
メンバーにはアレルギーとは別にいろいろな食の好みがあって全員を満足させるのは無理だと思った。煮え切っていない野菜がダメな人。コショーがダメな人、トマトがダメな人など、その人たちに合わせていると全然作れないのでそこは無理にでも食べてもらう事にした。まぁこのくらいの年齢の人がそういう事では良くないと思ったりしたので、そこも旅の醍醐味として味わってもらおうかと。
食事も終わり、いざ搬入へ。昨日ある程度までやったので今日は一日かけなくても大丈夫だろうと思っていたけど、どんなトラブルがあるかわからないので時間があまるくらいの計算で搬入はした方がいいと思います。だいたい展示会は二日間搬入の時間をもらえるのですが、数時間で終わってしまうブースもあれば二日間だけでは足りず間の一日の夜を徹して行う気合の入ったチームもいます。だいたい20:00までとか一般規約には書かれているのですが海外出展者はそのあたりはあまり気にしません。日本よりもそのあたりは強引な印象があります。世界から見ると日本人が行儀がいいという事になるんでしょうね。
昨日の続きが見える。そういえばmilcaの展示台にはもう一つあった。ENYAのアクリルを載せる展示台だ。昨日仮組みをしてみたものの、内部機構がまだきちんと完成していないので今日に持ち越していたのだった。アクリルの作品は下から光を当てるときれいだという事はわかっていたので内部にLEDを仕込み、その上に乳白のアクリルを載せた展示台にするという計画だった。これももはや作品。LED部品はインターンシップに来てくれていた後藤さんが昔エンジニアだったこともあり、日本橋で部品を買ってきてすんなり製作。その部品にGreenFarmのアダプタをつければ変換機だけで海外で使える。一旦箱は組上がり、LEDの取り付け作業を行うも、うまくかみ合わず微調整を行う。そういえばこのパーツを入れてから作るのは初めてだったかも知れない。小さなトラブル発見。あれこれ調整しているうちに四本持ってきたうちのLEDのはんだが外れてしまう。三つでも別段使えるとの事で仕方ないのでそれで進めて行くことに。
milcaは紙でできているため、コンディションによっては多少曲がってしまう。上に乗せるアクリルは真っ直ぐ作っていたのに対して外に拡がるカタチに。あれこれ試すも難しく、最終的に持っていたのがテグス。テグスで両サイドから引っ張り奇跡的に真っ直ぐに。こういう事が多くありすぎてトラブルもトラブルと思わなくなったし、奇跡的も「どうにかした」レベルで消化できるようになったのはみんなのスキルがあがってきたからに他ならない。
ブースにはまだ足りないものがあります。オフィシャルで用意してくれるブースのサインと照明です。他のブースには照明がついていたのですが、なぜかウチにはまだついていません。というのも、壁面にプレゼンボードを貼っていたのでそれに対して照明をどうつければいいのかわからなかった様子。さらに支払に関しても確認できていないという事から後に回されたようだ。
ブースに重要だと思う物の一つに照明設計があります。まわりにいくつかのブースがあった場合、やはり人は明るいブースを見てしまう傾向にあるからです。TENTLONDONでは最初の一灯はついていますが、そこから先はお金を支払ってつけてもらう事に。ここは「綿密な計算」により12個(多い!)つける事にしました。各作品とサインを照らす為です。他のブースは正面の壁の一番上にレールを付けてもらい、そこに照明をつけるという簡単な施工でしたがそこにプレゼンボード(大判プリントした漫画のプレゼンボード)がまたがっていた為、施工してくれなかったのだと思います。やりとりがうまくいっていなかったのと、支払いのカードの引き落としがうまくいってなかった事もあったのかなと思います。海外とのやりとりはそのあたりがとても難しい。結局交渉してその場で現金で支払って取り付けてもらうことに。
そこで思いついた事があって、作品が正面の壁沿いにいくつか並ぶためその真上からではプレゼン漫画が見えづらくなるのではないかと思い、上に梁を一本追加してそこから照明を取り付けるような事をENYAに交渉してもらった。現場での交渉が可能な場合はできるだけ交渉した方がいい。一度決まってしまうと会期中は変更できないためだ。巧みに交渉するENYA。コミュニケーション能力ばっちり。照明は上からレールを吊ってもらい、そこに12灯並べてもらえることに。他のブースにはない特別仕様となった。しかもそもそも決まっていた料金と同じ料金で。ビジネスにおいて交渉力がいかに重要かがよくわかった。
念願の照明が入り、作品も陳列し終わり、全部調整して一度完成させてみた。いいんじゃないか。ウチのブース。ENYAの作品の展示台がかなり目を惹くが、これを前に持ってきている事も実は作戦通りだった。人通りを止めるには何か気になるものが必要。その気になるものがまさにこの作品と展示台。作品自体はまた改めてご紹介するが、アクリルの中に漫画を閉じ込めた物。おそらく見たことないだろう。僕も一年ほど前まで見たことが無かった。
ひとしきり確認して一度作品に梱包材を付け直す。ここはホコリがすごい。あといたずらとかされないようにきちんと作品を守る必要がある。ミラノではよくそういった事件がおこったそうだが、ロンドンは大丈夫だろう。なんとなくでしかないけど。話は少し逸れますが海外展示会はその国外の人が多く訪れる為、スリの精鋭たちもこれを機に集まるそうだ。特にミラノサローネの時期にミラノに行く人は気を付けた方がいい。毎年友人が何かをすられている。iPhoneだったり財布だったり時には作品の一部だったり。そういう事から守るのも意識すればこそできるのかも知れない。
さて、終わった。今日も随分やったなぁと時計を見るとまだ昼だった。昨日の作業が功を奏したのだろう。かなり早めの完成となった。KEEP OUT(立ち入り禁止)の派手なビニールテープ(マスキングで十分)をブースの前に貼り早めの撤収となった。メンバーもよくがんばったと思う。疲れているだろうし、何より眠そう。朝早かったもんな。
と言う事で朝スーパーで買ったサンドイッチを食べ、アパートで全員昼寝をするということに。MickがBBQコンロを持っているのをENYAが発見し(注:Mickはずっといない。勝手に見つけただけ)みんながんばったので今夜はBBQでもしよう。となり、昼寝後アパート周辺を探索する事に決定し、メンバー歓喜。僕は持ってくるのを忘れてしまったパジャマ(に代用できるもの)と部屋履き(に代用できるもの)を探そうと思った。
グウ…。
みんな疲れていたのだろう。なかなか起きてこない。このままでは日が暮れてしまう。正直早く出て早くBBQやって早く寝たかった。なぜなら明日は大事な初日。とりあえず半ば強引にみんなを起こし、出かけることに。
アパート横の路地を行くと大きな通りにさしかかる。今日はそのあたりを探索する。東西に走る長い通りだ。前のブログにもあったと思うがこのあたりはインド系の住人が多く、おいしいエスニックレストランも多いらしい。帰国までに一度食べてみたい。イギリスとインドは歴史上深い関係があるのでそういう地域があるのも納得できるし。
とりあえず通りまで来た。西側に向かって歩くも特に何もなく、反対側をあるいてくるとDAYLY SHOP(日用品店)がある。当然インド人がやっている。食器から工具から何から何までドン●ホーテのようにびっしりと並べられている。値段も割とリーズナブル。みんな特に買う物が無かったが僕はさっそくここで部屋履きを買うことにした。といってもスリッパはいいものがなく、なぜかビーチサンダルに。スコットランド独立の住民投票で揺れるイギリス。もし独立したならユニオンジャックの紺色が無くなって大きな米という字になるとか無駄な情報が頭に入っていたせいなのか、はたまたイギリスに来たはずなのに拠点があまりにインド人街すぎてイギリスを満喫できていないのか(全然いいのだが)、とにかくユニオンジャック柄のビーチサンダルを買うというかなりおのぼりさんな事をしてしまった。安かったしいいか。
道を東へ。所々に古い建物がある。こういった古い建築はやはり見ごたえがあるし、歴史を感じる事はヨーロッパ遠征にはつきものだ。そういってそこらじゅうで写真を撮りながら練り歩く東洋人たち(未成年含む)はさらに東へ行く。インド系の人たちがやっているバザーがある。野菜がスーパーよりもさらに安く、BBQ用にととうもろこしと野菜を買う。道をさらに行くとスポーツ用品店を発見。メンバーは何も買っていないのに買わなければいけないものが多い僕ですが、ここでパジャマになるものを購入。ローカルなブランド(プーマによく似たマーク)の短パンを買った。つもりだったがそれが海パンである事が判明するのはアパートについてからである。
まさかの秋のロンドンで、ユニオンジャック柄のビーチサンダルとプーマによく似たローカルブランドの海パンを買う事になるとは。合わせても£10ほどだろうか。これも思い出といえば思い出。
さてかなり歩いてきた。足が棒のようだ。ほんとに。そろそろ復路へ。路地を曲がって少し歩くと遠くに砦のような建物が見える。なんだろうと思い前まで行ってみることに。覗き込むとそこは教会だった。写真はその砦のような教会。クリスチャンがメンバーにいるわけではないので足早にここを立ち去ろうとしたときに中からおばあさんが出てきた。
「見学かい?さぁ入って入って」
と誘われるがまま入る。本場の教会はヨーロッパに来なければ見れないだろう。本物の寺院をアジアで見るような物だ。宗教がもたらすパワーはほんとにすごいなと思う。建築やステンドグラスなどを気持ちで作ってしまえるからだ。そこに資本主義はあまり存在しない。必要だからこそ作る。動機はいたってプリミティブだ。
入ると説明をしてくれる。さすがにここまでの英語はわからない。理解できたのは二割くらいだろうか。ちゃんと勉強しなければ。このあたりの地域にはいくつもの教会があったが、今はここを含めて二つだけになったらしい。砦のように屈強な外観なのはここは(おそらく中世に)戦争をしている時見張り台としての役割があり、近所の住人が避難する為にこのようにできているという説明があった。また石造りの外観とは裏腹に内装は船底の構造を屋根に取り込んだしなやかで強く美しい建築だった。撮影できなかったのが残念だ。
歴史を少し学んだあと、少し歩くと道に公園があり休む事に。足が棒な僕は座っていたが、みんな見たことない遊具で遊ぶ遊ぶ。これが若さか。はたまた鬱憤を晴らしているのか。しっかり遊んだ後で家路へと急ぐ。割といい感じのカフェやパブを見つけた。ここに来てみたいなと思った矢先アパートについた。なんだ、近所じゃないか。いつだって来れるな。
一度アパートに戻る。Mick’s BBQコンロが使えない事と、僕が買った短パンが海パンである事が判明した。誠に残念である。スーパーであれこれ買う。今夜もまたビールを呑む。インドのビールシンハーが売っているあたりここはインド人街なのは間違いない。インディカ米やスパイスなどもそういった事を感じさせる。夜更かしもほどほどに寝る事にした。
なぜなら明日は初日だからだ。いよいよ始まる。
緊張で寝れるかどうかを心配する間もなく眠ってしまったようだ。