TENT LONDONというところ④

9/18(木) TENTLONDON 初日
寒くて目が覚めた。あまり眠れないのではと思っていたがしっかり寝ることができた。
良く晴れたロンドン。初日を祝うかのようだ。
自分が出展する訳ではないけど、なぜか自分が出展したサテリテを思い出す。楽しみと不安で緊張していたのを肌が覚えているのだろう。大きな何かが始まる前はだいたいこういう感じになる。床で寝袋で窓を少し開けて寝る生活も慣れてきたし、ミラノで苦しんだ時差ボケも問題なかった。ドンピシャでロンドン時間の体内時計が動いているのがわかる。ということは世界標準時なのかな?そう思うとまた違って聞こえる。
割と早い時間に全員ちゃんと起きれている。眠そうなメンバーが何人かいるが緊張して眠れなかったのだろうか。こうなると当然朝はシャワーが混むので早い物勝ちになる。湯が足りなくて水になる前にみんな入りたいと思うだろう。争奪戦である。夜のうちにシャワーに入った偉い人が朝ごはんを作る。その後の朝食時にENYAから人員について提案があった。
TENTLONDONを含むLONDON DESIGN WEEKは4日間ある。MILAN DESIGN WEEK(6日)よりも短い。その間に西では100% DESIGN LONDONが開催され、中央ではDESIGN JUNCTIONというイベントをやっている事を後から知る訳だが、TENT LONDONも広いのでメンバーはブースに2人+難しい交渉をする時の為にENYAが駐在。それ以外は他のブースのデザインを見た方がいいのでは?との提案。せっかくLONDONのデザインイベントに来たのでやはり見た方がいいと思うし、他のブースのレベルを知る事で自分たちが参加しているイベントがいかに世界水準のイベントであるかを肌で感じてもらう為にその提案を採用した。みんなは知らないだろうがブースにたくさんの人が来てくれるのはきっと楽しいだろうし、ブースから離れたくないだろうけど経験が大切なので。
ENYAは半年前から準備していた。ブースで彼らが自分の作品を英語で説明できるように毎週日曜日の午前の時間を使ってメンバーを集め、英語のレッスンをしていたのだ。こういう自主的な行いこそ意味があるし、自分たちの展示なのだから説明にもちゃんと責任が伴うべきと僕も思う。苦労を強いてしまったが彼らのうちの何人かにそれが着火すればENYAも本望だろうと思う。だからブースに立たない人達も多少であれば他のブースで英語で話せるはずだし、ブースでは全員が全員の作品の説明ができるように仕上げてきたのだ。…そういえば前日のブログで書き忘れたが、メンバーの畑(ROGER)は覚えてきたはずの英語を前日には忘れてしまったようで夜中まで特訓していたそうな。
マンガカのユニフォームは白のシャツ。オリジナルのマンガカと書かれたバッジをつける。これはブースのスタッフが誰かが一目でわかるようにと決めた事だった。全員それに着替えるとなんかかっこいい。昨日までの彼らと雰囲気が違って見えるのは服装のせいだけではないだろう。みんな緊張していると思うし、何より一年半かけて準備してきた事の本番のステージの幕が上がるのだから顔も引き締まって当然。
いつものTESCO(近所のスーパー)で朝食を買う。どうでもいい話だがミラノではあまりに米を食べた過ぎてスーパーで寿司を購入した事がある。TESCOで寿司を発見した時にそれを思い出していた。ミラノで買った寿司はリゾット文化のせいか米は芯が残っているし、ネタに限らず寿司そのものがひんやりと冷たかったし、魚のカタチをした醤油ケースはなぜか日本のサイズの倍ほどあるというエキゾチックなお寿司だった。その点はロンドンの寿司は温度や醤油については問題なさそう。ちゃんとガリもついているし。だけど8貫ほどある寿司のうち、わかるネタが2貫だけだった。見た事ないような寿司ネタに惹かれ購入する事に。
SAVE THE MONEY TRAVELと勝手に銘打った海外出展ですので全てを自費でやろうとするメンバーの為にもランチはできるだけ安くしたい。ミラノもそうだったし、東京もそうだと思うが展示会をやるようなイベント会場内は飲食がとても高い。一昨日食べたハンバーガーは一つ£8.0くらいらしい。恐ろしく高いのと、円安が相まってSAVE THE MONEYどころの話ではないわけです。そんな中サンドイッチとドリンクとフルーツの三点セットで£3.0というバリューを発見するもレジでなぜかそうならない。
言葉がわからないというのは色々見えにくいものだ。プライスカードに小さく書いてあるのを発見したのは二日後の事。こういう事を経験すると日本はしっかりおもてなしされていると思うし、街で迷っている外国人を見ると助けてあげたくなる。以前からそういう事をしているがより一層そういう気持ちが強くなる。助け合えばだいたいの事はできるものだし、そこから生まれる新しい事だって存在する。他人の為に自分の時間を使う事が一番幸せな事という自分の一つの結論が暮らしを進める度に強く確信する。
こっちのスーパーは人員が少ない。昼間はレジはほとんどセルフレジで、10台ほどのレジを一人のスタッフが怖い顔をしながら見ている(怒っているわけではなさそうだが)。バリュープライスについて聞く語学力もなくそのままの値段を支払う。言葉が足りていない自分の問題として今後に活かす事にする。海外に行くと小銭が貯まりやすい。不思議な事の一つだったがコインを覚えるのに時間がかかるからだと今回あらためてわかった。UKでは1ペニー、2ペンス、5ペンス、10ペンス、20ペンス、50ペンス、1ポンド、2ポンドとコインの種類が多い。日本よりも2種類多いので当然覚えられない。
事にコインの金額がポンドを超えてくると厚みもおかしい。財布に入れる事を考えてのサイズではなく、賭け事で使うとダンディーだろうなと思うくらい「ほぼメダルでは?」と言っていいほどの重厚感である。t(厚み)=4mmくらいはあるだろう。それが貯まってくるといよいよ財布が日本では見た事ないような形状になる。2ポンドコインを見かけたけど、ニッケルの周りに真鍮が巻かれていて「これは間違いなくメダルだな」と確信した。旅の終盤ではセルフレジはコインを使うには本当に適切なシステムだと思った。UKに行かれる人はぜひコインにも注目してほしいし、貯まってきたらぜひTESCOのセルフレジでゆっくり支払ってください。そうすれば財布のカタチは変わらずに済む。
とにかくこの時点では財布はパンパンになっていた。そもそも現金主義なのでnoteと呼ばれるお札もたくさん入れていたが、なによりコインだ。これは海外を旅する時にはだいたい問題になる。noteも金額が大きくなると紙のサイズが大きくなる。日本のお札は非常に優れていると思った。多少横に長くなるだけだからだ。縦はほぼ変わらない。しかしポンドになるとなぜか縦に伸び始める。
…おわかりだろうか。財布から縦にはみ出し始めるのだ。納まっていないので鞄やポケットに入れておくと、一番大きなお金である£100(17000円相当)からまずボロボロになっていく。これもまた旅の不思議だ。海外を旅する時は縦に深い財布が必要になる。こんな忘備録を書く事になるとは思わなかったが大事な事だと思う。グローバルブランドがどのようにして財布を設計するかはnoteの世界サイズを知る事から始めるのだろう。大は小を兼ねるのだから。
さて小銭で全員の自重が重くなったところで今日も右左折を二回をして展示会場であるオールドトルーマンブルワリーへ。
昨日帰る時には全体のブースの半数は全く完成していなかったのに今朝来ると全部仕上がっていた。不思議だ。昨日一日どこかで遊んでいたかなと記憶をたどるも、昼過ぎまでここに居たし、その時には何にもできてなかった。海外の人は準備にさほど時間を必要としないのだろうか。とにかく驚いたし、ミラノの時も開催前日の夕方まで何もできていなかったブースが当日の朝には完璧に仕上がっていた事を思い出した。まったく不思議である。
一般規約によるとブーススタッフは開始の30分前に来て各ブースの掃除を行う事と書いている。ミラノでもそうだし、まぁこのあたりは海外出展する人なら当たり前にするだろう。と言う事で余裕を見て一時間早く会場に着くもすでにちょっとお祭り状態だった。蛍光ベストを着ていたインテリ風のスタッフは今日はブルーのセットアップでより一層インテリジェンス。裏方の気合を肌で感じつつ、パスをもらう。夏フェスなどでよくつけてもらうビニールをスナップで止めるようなタイプの物だ。僕らは白い物をもらった。
後からわかった事ですが、白のバンドは出展者、青は一日券を持った来場者、赤は通し券を持った来場者、紫はプレス関係でした。こういう情報は非常に重要です。僕らはカタログの他にプレスキットという物を用意していました。カタログは印刷物ですがプレスキットはCDに各作品の写真と画像が入っている物で、雑誌編集者にはカタログよりもそっちの方が助かるのです。つまり紫のバンドを付けた人がブースに興味を持ってもらえたら、「私たちはプレスキットを用意していますがご用意しましょうか?」という事ができます。そういう事も過去に集めた情報と出展経験からわかってきた事ですね。ここで今後出展する人の為に公開しておきます。
あとプレスルームという部屋があります。そこはプレスのみが出入りでき、各ブースのカタログやプレスキットを手に入れる事ができます。そこの棚ももちろん取り合い(公平性を欠きますが)になります。すでに悪くない位置にMANGAKAが陣取っていました。先手で動いていて良かった。ミラノでの忘備録はメンバーがちゃんと読んでいたので、僕がミラノで経験した事が多少活かせたような気もします。
しかし天気がいい。朝の光がまぶしい。ロンドンらしからぬ天気だ。傘の出番はあるだろうか。とりあえず僕はTENTLONDON内にあるカフェで朝のコーヒー(£2.5)を買う事に。まだスタートしたばかりで手間取っている。こういう所はまだできてないようだ。そこのカフェは夜バーになるらしく、ハイネケンのカッティングシートを貼っていた。そうそうあれだよ。あーやって少しづつ透明フィルムはがしていくんだよ。UKのビール醸成所跡にオランダのハイネケンが入る。そういえば外にあるVIPラウンジもハイネケンがスポンサーだ。ハイネケンは近年の国際デザインコンペを行っていたりして少しづつデザインシーンに定着してきている。日本もそういう他の業態にどんどんスポンサーとして挑戦できる環境にあるといいのだがまだまだそういった土壌はなさそう。お互いにメリットがある話なのですが。
「TENT LONDON開始します」とアナウンスが入る。待ちに待った瞬間がスタート。
とはいえ初日の朝からTENT LONDONという若手のブースを見に来る人はそんなにたくさんいない。まだまだのんびりした時間は続くだろうと、サテリテの経験が頭の中で囁く。とりあえず朝のメンバー二人(2時間)とENYAを残して各自周りを見に行くことに。
同時に今回はこれまでやったことのない取り組みをしてみる事にした。ブースをより楽しんでもらう為に、作品全ての漫画を担当したメンバーの山田(Viola)が会場内で似顔絵漫画を書き、ブースに興味を持ってもらうという作戦だ。日本のクールなデザインイベントとは違い、海外のデザインイベントはお祭りである。迷惑でなければ何をやってもいいし、それぞれがアイデアとユーモアで自分たちに目を惹かせるのもセンスの一つだと考えて、ブースのコンセプトをより先鋭的に表現する為の仕掛けを用意していたのだ。サテリテでは三つとなりのブースが来場者が少ないから来ている学生たちを呼び寄せていっせいに拍手をさせていた。こういった着想は日本人にはあまりできないのかも知れない。物で勝負しすぎて仕組みが作れていないのだろう。欧州で強くその差を感じた僕は今回試してみる事にした。その結果はまた後で。
さて、ひとまず他のブースを巡る。クライアントとの顧問契約の関係上トレンドや発見した技術や商品を詳細には書かないようにしなければならない。なんとなく全体で感じたところを書き綴る。詳細のデザイントレンドなどの情報が欲しい人は相談に乗りますのでご連絡下さい。
さてまずは分布である。アジア人のブースはミラノに比べて少ないが韓国と台湾は来ている。どちらも今世界注目の国と言える。韓国に至っては韓国政府が援助して伝統工芸品を韓国の著名なデザイナーやクラフトマンと作品を作り大きなブースを構えて展示していた。日本がミラノでやっているJAPAN STYLEがロンドンでは韓国が行っている。展示はもちろん素晴らしくレベルも高い。全体としての分布はUK、ノルウェー、フィンランド、ポーランド、フランス、スペイン、トルコ、デンマークなど。少し北欧と東欧が多い印象があるのもまた面白かった。また学校や学生の展示というくくりはなく、となりのブースはプロのブースだったりするわけですが、それでも遜色がないくらいレベルは高い。サテリテとはまた違った印象がある。
一方、出展作品についてはサテリテに比べてコンセプト色は弱い。むしろすぐにでも商品になりそうな物が多い。考えればTENT LONDONはサテリテと違って賞というものが存在しない為に純粋にビジネスにつなげやすい提案が多くなったようだ。あと考えられる要因としてはマーケット自体に変化があるのだろう。大きく欧州を中心としたグローバルマーケットから、UKならUKといったローカルでいて支持力の強いマーケットが少しづつ強くなってきているようにも感じる。
以前サテリテ後に交渉を続けていたメーカーとの話の中で、彼らが持っているマーケットは広いがプライスゾーンは低い為にできないと言われた。物の魅力は伝わったものの製品化を見送られてしまった。大量生産である程度ロープライスを狙う戦略と、ローカルで価値の高い商品を妥当な値段でほしい人にだけ販売するという二極化が起きていると強く感じる。良い物は高くても買う人が多くなってきたのかも知れないし、IKEAやH&Mといったロープライスでコストパフォーマンスの高い販売戦略をとるグローバル企業が増えてきているのもその二極化を進めている要因だと思う。とにかく簡単に作れそうな商品には面白みがなく、また実現困難な物を作ると商品化されない、その間をうまく行く手法が今後問われるのかも知れない。価値を上げて価格を下げる方法ももちろんある訳だし、ここからは実践でやっていきたい。
展示品カテゴリーとしては、椅子が多いサテリテに対して照明とファブリックが多い。あとはマテリアルデザイン。簡単に言えば壁面材である。このあたりの提案も多い。欧州ではリノベーションが多い為壁面材そのものを商品化したり、テキスタイルデザインそのもののロイヤリティで商売しているデザイナーも多く見受けられる。当然レベルはとても高いが日本ではそういったスタンスのデザイナーはあまり見かけない。既存の建物をリノベーションしていく時代に差し掛かる日本においてもそういったビジネスは可能になるのではないかと思っている。
またTENT LONDON内にはSHOP TENTというコーナーがある。サテリテではよく「これはどこで買えるの?」と聞かれた。日本のデザインの展示会と違い欧州の展示会は来場者の中でも一般層がとても多いからだ。言えば当然売ってくれると思っているし、そういう声をかけてくれるのはそれだけ完成度が高いプロトタイプだと受け止めているが、「今はプロトタイプで生産と販売をしてくれるメーカーを探しているんです」と言うと残念そうなトーンで「販売されたら連絡下さいね。」と言われる。サテリテの一般規約には「展示品は未発表の物に限定し、販売されていない物に限定する」とあるので当然と言えば当然なのだ。しかし今思えばTENT LONDONの規約にはそのような事が無かった気がする。ちゃんと確認しなおさないといけないけどそういった括りで出しているブースがSHOP TENTである。ここに展示されている物はその場で買う事が出来る。そういう勝負もここではできる。来年のTENT LONDONの出展を考えている人の為に書いておきます。
TENT SHOP内にはDEZEENで見たデンマークの椅子があったり、トルコの学生(だったと思う)が作ったガラスの照明器具が美しかった。あとフィンランドから来たカトラリーがとても美しく、値段はそれこそ割としたが日本はおろかアジアには入っていないらしく、今後いつこういった素晴らしい物に出会えるかわからないので夜まで待って買う事にした。その商品をあまりに気に入ってしまったが為にその後ブースに三回訪れる事になりすっかり馴染みになってしまう。そういうのも展示会の楽しい所である。
このフィンランドのカトラリーもそうだし、去年TAIWAN DESIGN WEEKで買った湯呑みもそうだが「日本には入って来ていないけど素晴らしいデザインの物」はまだまだたくさんある。世界中の物が日本(特に東京)で買えると思っていたけど、全然そんな事はないしまだまだ発掘されていない商品はたくさんあった。今回もそういう物に初日から出会えてよかった。希少性も一つの選択肢になる時代が来ていると思う。アーツアンドクラフツ2.0と言ったところだろうか。暮らしを豊かにする為の手段としていつだってデザインは最も有効だと思う。
しかしなかなか広い。それこそローフィエラミラノからすれば大した事ないが、それでも3m×2m程の小さく、また水準の高いブースが軒を連ねる為に密度が違うのだと思う。あっと言う間に昼に。とりあえずブースに集まってメンバーを残して外のテーブルへ。僕らの装備品として海外で使えるポケットwi-fiを2台の他、前回ミラノの帰りに飛行機で買ったwalkie talkie(トランシーバー)を持って行っていた。ブースに一台と見て回っている人に一台あり何かあったらすぐに呼び出せるようにしている。そうなる可能性があるのはENYAと山田(Viola)だ。
何かトラブルや交渉があればすぐに飛んで行ける場所に外のテーブルがある為比較的ゆっくり食事をする事ができた。先ほど買った寿司を食べてみたが、馴染みの2貫のみわかったがそれ以外はUKだった。なんとも形容できない味だったがミラノの寿司よりは断然おいしかった。事にガリは完璧だった。ガリの水準が重要だとどこかの日本人が教えたのかも知れない。そんな事を考えながらハマチが食べたくなってしまった。
昼食時のテーブルはどこも盛り上がっていた。多くはデザインの話をしていた。日本でも同じように話をしているだろうけど、こっちはもっとエモーショナルというか、淡々とは話さない。どのテーブルも豪快にとても大きな声で話している。デザインを掘り下げるにはこうして何か書いたことに対してレスポンスをもらうか、お互い話し合うのが一番だと思う。一人で掘るのには限界があるのだ。欧州の強さをそこで感じているし、日本やひいては大阪ももっと活発にデザインそのものの議論をする時間を作るべきだなと思う。小さな街だからこそ一つになって熱く語れると思うし、台南でも感じた事だがその部分はまだまだ遅れているように感じる。
昼食後も引き続き視察を続ける。会場であるオールドトルーマンブルワリーは一部の敷地は天窓になっている。今日のような天気になるとそのエリアは異常に暑くなる。会場側に誰かが要求したのか、扇風機が配布されたようだ。見た事のない物が多い。マテリアルも日本では知られているがあまり使われない物もかなりの水準でデザインされ商品になっている。そういった事はとても刺激になる。海外展示会に参加する意味の一つとして僕が見出した答えは「デザインの蒸留作業」だ。見た事のない美しい物に触れたり、その国や文化とデザインの関係性を紐解く事で自分の状況や価値観を俯瞰し、少しづつ無駄な物をそいで蒸留していく作業に似ている。今回のロンドンは自分は出展しない選択をしたので、特に見て回る時間と量が多かった為に受けた刺激はミラノ以上だったかも知れない。大きくインプットしなければアウトプットの質は上がらないし、より広く世界でそれを見なければ幅も拡がらないし柔軟性は育まれないだろう。
同会場で行われている100%DESIGN NORWAYへ。ノルウェーの素晴らしいデザインを紹介するエリアだ。北欧のデザインはいつだって素晴らしいと思う。素材との対峙の仕方がとても自然でいて美しくまとまっている。家に置くものとしての温かさがもちろんあるし、いろんなエッセンスを世界中から取り込むもきちんと自分たちの文化や感性というフィルターをしっかり通って出てくるもの。どれも本当に美しいし、僕には世界にいくつかの尊敬するデザインスタジオがあるのですが、そのうちの一つにノルウェーのPermafrostというデザインスタジオがある。PermafrostがデザインしたSTOKKEというベビー用品ブランドの一連のデザインはとても素晴らしいと思っていたが実物をみてさらにそれが美しいと感じた。ベビー用品のデザインを手掛けてみたいと思う今日この頃。とても大きな刺激をもらった。
MANGAKAの向かいのブースもノルウェーの二人組だ。Domaas/Høghと言うデザインユニット。彼女たちの商品も並んでいた。Domaas/Høghのデザインにはそこはかとないジャポニズムを感じるが、聞くとそういう影響を多少受けているらしい。だがそういった解釈の中にもしっかりと北欧の遺伝子をつぎ込み物としての美しさとやわらかい存在をしっかりと定義している所がとても美しかった。彼女たちは去年サテリテに出展していたらしく、再来年またサテリテに出展する予定だとか。ぜひ日本にも来てほしい。
北欧デザインにやられたあとである程度見て回り、会場の80%ほどを確認できただろうか。ほどなく夕方に。今日は初日なのでパーティがあるそうだ。一度ブースに戻り成果を尋ねる。みんな一通り緊張していたものの始まると楽しかったらしく、また英語でのプレゼンテーションはどんどん慣れてきたようでENYAの半年の苦労が報われた瞬間だった。本人の顔を見るとご満悦だった。良かったねENYA。海外のデザインイベントにはパーティはつきものだ。サテリテはフィエラ会場内では無いが、ミラノ市内で行われるフオーリサローネでは毎日のようにカクテルパーティが行われる。サテリテの時はRaulがサテリテアワードを受賞した記念にZona Tortonaへ行きnendoとLasvitのカクテルパーティへ参加した。事務所のプロフィール写真はその時に撮影した物で、実は遠くの方に佐藤オオキさんが確認できる。
さてパーティだが、会場内で行うとあったが実際には会場内を練り歩きそのあたりで適当にしてくださいというフリーな感じだった。一番盛り上がっていたのは外にあったVIPラウンジだった。ほぼクラブ化していたし、入る事もできないだろうと思った。デンマークのブースではビールがふるまわれていたのでそれをもらいちょっとパーティ気分をそれぞれ味わったあと、全員で帰宅し全員で食事を作り、全員で初日の祝杯を挙げた。
夕食時にはその日の報告会をする事になっていたので初日の報告を聞く。大きな話がニ件入っていた。とても大きな話だし学生にとっては計り知れないほどの大きな経験だろう。自分たちでがんばって起こした事によるご褒美なので基本的には自由に選択させることにした。その後その話がどうなったかも聞いていないし報告もまだもらっていない。ちょっと気になるけど。
明日はチームを二つに分けてオールドトルーマンブルワリーでブースを持ち寄るENYAチームと、100%DESIGN LONDONやDESIGN JUNCTIONを見に行く江口チームに分かれて行動する事になった。もちろん外に行くチームが朝食と夕食を作ってブースチームをサポートする事に決定。
明日はENYA無しで街中をぶらぶらする事になるので非常に緊張するも、今回の旅はどちらかというと引っ張る役目だと考えていたので英語に関してはその自覚あってか積極的になっていた。仲間もいるし楽しめるのでは。
と言う事で程ほどにして寝ることに。一日歩いた歩数を考えればすぐ眠れるのも理解できた。
明日も天気がいいといいな。