19/08/06
19/08/06
結びつきは古き良き時代の力を借りて。
前にブログを書いたのが2017年の10月。ちょうど事務所が9周年を迎えた時のことでした。2年近く前になります。
大変ご無沙汰しております。
SNSが充実しているのでブログはあえて書かなくても近しい方は近況を知っているかと思うのですが、やっぱりブログは定期的に更新したいなと思いました。ブログは何に影響されることなく書けますし、フォロワーも存在しないフラットな場としてやっぱりいいなと思ったからです。
もう結構間が空いてしまったので読者は離れてしまったと思いますし、あえてここでブログを再開していることもSNSで報告するのもやめて、基本的に解放されていますが気が付いた人だけが読めるようなものにして、内容は尖っていきたい。逆に誰がこのnote全盛の時代に「ひっそりと再開したブログ」を見てくれるのかというレスポンスも楽しみです。
あと言い訳になりますが、その後ぱたっとブログが途切れたのは忙しくなったことと環境が変わったことが大きな要因です。メンバーが入れ替わったり10周年を迎えたりと書かないといけないことが本当にたくさんあるのですが、少しずつ思い出しながら、さらに未来に向けてのことも書くために今日はもうあまり新しくもない新事務所についてお話します。
さて、その後何があったかというと、2010年から借りていたメリヤス会館の410号室がいよいよ手狭になり、また7年くらい同じ場所にいると新しい感覚も減ってくるような気がして仕事の合間を見ては新しい僕らの基地を探していました。その頃何を考えていたかというと、デザイン事務所という場所が閉鎖的だということが、必要とする方とデザイナーとを遠ざけている大きな要因じゃないか。また「少し開けたデザイン事務所」はできないだろうかと、コミュニティ機能を持たせたデザイン事務所を構想していました。ちょうど2015年頃からそのような構想で探してはいましたが、いい物件というのはやはり借り手も早く入りますのでなかなかいい物件に恵まれませんでした。
もちろん家賃は固定費なので安いにこしたことはないですが、したいことをできる「アソビを持たせた空間のある事務所」としてちょうど良かったのが今いる新事務所です。といっても借りたのは昨年の3月で、もうすぐ1年半になります。
新事務所は築50年くらい。ちょうど日本が高度経済成長中であり、「忙しかった頃の日本」を代表するかのような構造で、3階建てです。連棟といって同じ構造の物件が横に連なっているひとつの建物で、いわばアパートのような変わった作りの建築物です。
1階は天井高3.8mの当時作業場として設けられていた広い空間が存在します。この事務所の1番の特徴です。ここはマルチパーパスルーム(多目的室)と意味づけていますが、いわばギャラリーです。ただギャラリーとして運営したのはまだ2回で、それ以外はプレゼンに使ったり、クローズドなワークショップやパーティ、あと映画を見たりとか先日は流しそうめんをしたりとかしており、コミュニティの核となるような位置づけになればいいなと思い借りましたがその通りの使われ方を今はしています。
ゆくゆくは展示が増えて常時ギャラリー化させたりお店にしたりしてもいいなと構想していますが、あくまで環境やコミュニティの変化に対して柔軟な空間でありたいなと思いますので、しっかりした定義はしないでおこうと思います。ここで起きることが時代を映すことになるので、柔軟な対応ができるように什器も非常にインスタントなものになり、普段はがらんとしています。たまにひとりで3.8mの何もない天井を眺めながらアイデアを考えたりしています。
1階のギャラリーの名前も実は一年前に名づけていて、名前は「頁」といいます。読み方はページです。頁ギャラリーは、デザインの世界の外側の人が初めてデザインに触れる1ページ目を続けるという意味がメインにありますが、それ以外に「漢字でも英語でも意味として正しく表記でき、端的な強さを持つもの」という創造的な企図が存在します。ここはウェブサイトもFBファンページも無いのですが、そうしたゆるやかな活動でいいのかなと思ったりしています。またぜひ遊びに来てください。
2階は当時事務所として使われていた空間で、小さな台所がついているのが特徴です。また1階から3階までを貫く吹き抜けが存在し、50年前は滑車で物を上げ下げしていたと思われる空間が存在します。その吹き抜けを眺められる窓が存在します。ここは今メインのスタジオ(デスクワーク)をする場所で、スタッフはだいたいここで業務をし、サンプルや試作品、完成品、あとデザインの洋書などが置かれています。
3階は当時居室(住み込みの為の部屋)として設けられている一番小さな部屋で、3階のみ床はPタイルになっています。ここは倉庫兼工房にしており、工作業務が増えてきた僕らには一番ありがたい部屋でもあります。また仕事には直接関係ないけど、僕らのインスピレーションの助けになるような「いろんな変わったもの」がここに在って、時々眺めては「これはなぜ惹かれるのだろう」と考えたり、また僕が一人で物事を考えたいときの為のテーブルがあってネットワークを断絶することで思考の深いところに入る為の部屋として今使っています。また3階にはバルコニーがあって、春と秋にはバルコニーで考えごとをしたり、読書をしたりしています。バルコニーがついていることも決めての一つになりました。
家賃総額は少し上がりましたが、単価としては実はかなり下がっており、構造も非常に使いやすく気に入っています。何より以前は何か自分たちでしたいことがあっても、お店やギャラリーを借りなければならず、それは結構高いものです。ですが、あえて自らこういう場を持つことによりそのハードルが無くなりましたので、可能性は全方位に広がったイメージです。また僕からこの街への投資的な意味もあり、「何かしたいけど場所がないクリエーターやデザイナー」がしたいことが、街に必要なことであれば僕は1階を無料で貸すことを以前公言しました。実際に久慈達也さんのトークショーをしたり、今度は大工真司さんのトークショーを行う予定ですが、こういった場を持ち、ここに「時代性」をインストールすることで場の活性と、結びつきを強くしつつあるので無料でやっても意味があるということの目的はある程度達成されてきているんじゃないかと思います。
新しい事務所に引っ越して気持ちも変わり、メンバーも随分変わってきましたがもうすぐ12年目に突入する前にいくつかの総括をして、常に変化しつづける活動体でいたいなと思います。そのあたりのことをまた折をみては少しずつ書いていきたいなと思います。
話したいことが実はたくさんあるんですよね。