16/05/10
16/05/10
デザインキャリブレーション
photo : Takumi Ota
今年初めてのブログです。更新がおそくてすみません。今年に入り書きたい事はたくさんありましたが、うまくまとまらないので書いていませんでした。そうこうしているうちに春も過ぎようとしていますね。
少し前の話になりますが僕らは四月に三度目のミラノサローネに出展してきました。今回も35歳以下限定のエキシビジョン「サローネサテリテ」にブースを構える事にしました。2000年頃にミラノサローネの存在を知り、2008年にはじめてサテリテを見て「ここで勝負しないといけない」と思い、2012年になけなしのお金を使って世界を見る事ができた、自分にとってとても大切な場所だと今改めて噛みしめています。自分を大きくしてくれた場所。もう出展できないのだと思うととても寂しいですが、いつかは卒業しないといけないのでこの場所は次に託して前へ進もうと思います。
2012年にはスペイン人デザイナーRaul Lauriとの出会い、台湾のスターデザイナーSally,Jacky,Ginaとの出会い、フランスのあるエディターズブランドのディレクターとの衝撃の出会い、決して上出来ではなかったけど成長と共に自分の人生観を大きく変えたそんな最初の出展。それからInteriorlifestyleTOKYOやLIVING&DESIGN、TENTLONDONなどの出展を重ねて望んだ2015年。多くのメディアとプロジェクトが動き出した出展でした。盟友Francesco Fussilo、Ian Yen、Josie Wang、Scotty Fuang、フランス人キュレータSylvieさんとの出会いだったり、Claireさんがインターンに来るきっかけになったりと実りある昨年の出展。
そして先日35歳にして3度目の正真正銘最後のサテリテが終わりました。まだ終わった所ですので多くの事は書けませんが、素直に心情を話すと出展して良かったと思います。今年も多くの出会いがあり、またいくつかのプロジェクトが動き出すきっかけになった出展でした。僕らのプロトタイプの一部はすでに海外にあり、その行く末が期待されます。
時折このような出展に対してメリットがありますか?と尋ねられる事があります。または、多くのお金をかけてまでやる意味ありますか?とさえ言われる事もしばしばあります。これは人によってはメリットが無いと感じるでしょうし、投資したお金がかならず戻ってくるかというとそうでない場合も当然あります。ただ何を目指しているかで出展するかしないかはそれぞれで判断すればいいと思いますし、あまり打算的な考えで出るべき場所では無いと思います。出展者にしかわからないと思いますが、出展者同士のコミュニケーションの中で伝わってくる純粋な想いがあのような素晴らしい場を形成し、刹那的に輝いては終わります。そういう純度の高い場所だと定義していますし、僕にとってその場所はとても居心地が良かった。それだけなのです。
普段のクライアントワークはプロフェッショナルとして当然期待以上の物をアウトプットしなければなりません。ただ時として自分には定期的に「デザイン観をキャリブレーション(目盛の調整)」をする必要があります。15歳から勉強をはじめてもう20年程になりますが、未だにデザインを明確に的確に語る事はできません。ただある程度その人なりの倫理観や哲学、生き方をプロジェクトの制約に投影する事なのかなと思ったりします。その「内面」を鍛え、整える作業は定期的にしなければ心を失い、歪んだものが投影されてしまいます。そして出展と視察では同じ場所にいても見える景色はまったく違いますし、感じ取るものも当然変わってきます。ですので視察だけではなく予算を組んでの出展を繰り返してきました。意味があると思っていなければ継続はできない。そしてその意味は損得を超越したものだと僕は捉えています。
若輩の頃に憧れた場所に、皆に公平に与えられた「3度のチャンス」をきちんと出展する事が出来た事は本当に恵まれていると思います。心を大きくして頂けました。そしてあの特別な場所で出会えた人達とこの先デザインの世界を生きて行きたいと改めて想い噛みしめています。自分でもやり遂げる事ができるとは思ってませんでしたが、多くの支えあってそれは実現しました。そして次の出展は白紙です。ある程度そういったプロセスの終わりを自分自身感じました。ただまたそれを求めた時に世界のどこかの展示会にこっそりブースを持つかもしれません。そういう日が来るかも知れないし、来ない気もしますがそれをふわふわと考えるのもまたいいのではと思いました。
写真は最後の出展ともあって、あこがれのカメラマン太田拓実さんに依頼して撮影して頂いた写真になります。想像を超えた美しい出来栄えに感動し、またプロフェッショナルを感じました。近いうちに自らのプロジェクトの撮影もぜひシャッターを切ってもらいたいと思いました。重複しますが次の出展は未定です。どこかでいい縁があればまたプロトタイプを拵えてエキサイティングな旅をしたいと願いながら次のフェイズに以降しようと思います。ただ僕が引き連れて行った若い世代には何か火種をパスできたようで、少しづつ燻り始めています。大きな輝きになりますように。
去年のパリに引き続き、今年の道草はオランダのアムステルダムでした。ホームタウンの大阪との共通点は水路くらいですが、その街のゆったりとした空気感と、優しい人々美しい風景が僕らの疲れを癒してくれました。