14/10/22
14/10/22
TENT LONDONというところ⑤
この連載を始めて以降多くのアクセスを頂きありがとうございます。いつのまにか一か月前の話になってしまいました。本当に更新が遅いですが気長にお付き合いください。
9/19(金) TENTLONDON 二日目
昨日話した通り今日はチーム二手にわかれて外を見に行く。ブースチームの為に早起きをし朝食を作る。僕は外出チームなのでこの日TENTLONDONで何があったかは具体的にはわからない。
初日に色んな人から「DESIGN JUNCTIONは見に行った方がいい」と言われ、外に行くチームはセントラル(中央ロンドン)で行われているDESIGN JUNCTIONに行くことにした。DESIGN JUNCTIONまで行く方法について色々検討してみた結果ロンドンタクシーを使ってみる事にした。ENYAが言うには乗り方はあまり難しくなく、現地のそばまで安全に行けるからそれがいいのではと。電車はバスは路線が在る為コスト的には安いかも知れないが土地勘が必要になる。それは日本でも同じだろう。
朝食を済ませ、ブースチームが先に出て行く。お気をつけて。外出チームは少しゆっくり。今日も天気がいい。朝の清々しい時間が流れる。
今回のようにアパートを使うといいメリットがある。それは洗濯機がある事。洗濯できる環境にあれば持っていく衣類の量は半分以下に減らせる。使い方はあまりよくわからないが肌着レベルの物は洗濯機で洗うようにすれば無駄な物が無くていいし、洗濯物が溜まると不快感もある。こういうゆっくりした時間の日には洗濯したいものだ。
ここでそれぞれのチーム編成を書いておきます。と言ってもわからないと思いますのでそれぞれにリンクを貼っておきます。
Aチーム(ブース) 赤藤(Shawn)、土井(Pamela)、林(Minnie)、水掫(Zoe)
Bチーム(外出) 畑(Roger)、江川(Eva)、奥村(Olga)、森脇(Mona) +江口 →DESIGN JUNCTION
常駐組 ENYA、山田(Viola)※似顔絵を描くため
チーム編成はまず僕を除いて二人しかいない男性を二手に分け、あとはバランスを見て編成した。こういう事をさせてもらう事も今後あまりないだろうな。珍しい体験だったと今改めて思う。
さていよいよロンドンの街に繰り出す。程よいスパイスの香りとも少しお別れ。昼食はどこで食べられるかわからなかったので結局いつものTESCOで買う事に。拠点選びと言うのは旅の最も重要な事かも知れない。TESCOを抜けるといつもの大通りへ出る。ロンドンタクシーの乗り方は、まず道でタクシーを止める。その止め方も手を上に上げるのではなく水平に上げる。ヒッチハイクの手のひらを拡げたような姿だろうか。タクシーが止まってくれたら住所を書いた紙を助手席側(歩道側)からドライバーに見せる。それを見てドライバーが判断してOKがでれば乗り込むことができる。もしもの為にあらかじめ全ての目的地の住所をノートなどに書いておくと便利だろう。
緊張しながらも実践。大通りは相変わらずすごいスピードだ。大阪はマナーが悪いと思っていたけどロンドンや香港や台北から見ればとても優しい街だと思う。日本の当たり前は海外では通用しない。日本が優しすぎるのだと思う。さて二台素通りされてしまった。そのうち一台は乗車していたが、もう一台は空車っぽかったが止まってくれなかった。そういう事もあるんだろう。三台目で止まってくれた。ドライバーはいい感じのおじさんだ。さっそく紙を見せる。フムフム言いながら「いいよ、乗りな」と言ってくれた。早速乗り込む。
知ってる方もおられると思うが、ロンドンタクシーは後ろに五人乗る事ができる。その五人のうち二人は後ろ向きの座席に乗りさながら小さなリムジンと行ったところか。もし助手席にも乗車可能であれば最大6人まで乗れるのかも知れない。調べてみないとわからないが。メンバーと僕でちょうど五人なので乗る事にした。乗り物酔いに強いという自覚があったのであえて後ろ向きの座席にチャレンジ。…これが失敗だった。ロンドンの道は舗装があまりきれいでなく、ドライバーの運転も荒い(ブレーキがきつい)ので走り始めて五分で気持ち悪くなってきた。暖房がついていたのか、それともロンドンらしからぬ陽気のせいか、車内はすごく暑かったのでドライバーに「窓を開けてもいいか?」と聞くと「OK、いいよ」といって開けてくれた。思った以上にロンドンタクシーはレベルが高かったがいい経験になった。三半規管の強い人は後ろ向きに乗ってみて下さい。僕はだめでしたが。
東ロンドンから中央ロンドンへ抜けて行くとだいぶ街の雰囲気が変わる。いわゆるヨーロッパの街並みになってきて、美しい建築物が増えて行く。
さて、中央まで£15程度という事前情報どおり、15£(2500円)くらいで来ることができた。五人で割れば一人500円くらいだ。安全を買ったと思えば悪くない。そしてロンドンにはチップの文化がある。レストランやタクシーを使うとその10%くらいをチップとして支払うようにと情報があった。地元の人に聞いていないのでわからないがとりあえずそこは従ってみる事に。£17を支払い、「領収書をください」というと手書きでチップ込の料金を書いてくれた。こういうものなのか。小さな経験だった。
さて車酔い覚めやらぬ間にDESIGN JUNCTION会場に到着。あらかじめ登録しておけばスムーズに入れたのだが急遽決めたので登録せず長蛇の列に並ぶ。海外展示会に視察に行く人はきっちり計画立てて行動した方がいいと思います。並ぶこと10分。
ようやく入口へ。入場料は£10。まぁまぁのお値段。それよりも時間が大切だった。僕はずっと自由行動だけど学生たちは今日しかTENT LONDON以外のLONDON DESIGN WEEKを見て回れないのだ。まだ一階だが来てよかった印象はすでにあった。イギリスを代表するインダストリアルデザイナーTOM DIXONがオーガナイズしているのだろう。入っていきなりTOM DIXON SHOP。普段見れないような物が多数並びそして全てセールになっている。写真はその「TOM DIXON SALE」の模様。欧州在住であればきっと買っていたであろう真鍮のシェードやチェアが70%オフなど、大判振る舞いにも程がある。そして人が多すぎる。理由は言うまでもないでしょう。
DESIGN JUNCTIONは地上4階、地下1階(駐車場を展示会場にしている)で構成された大きな展示会場。オールドトルーマンブルワリーよりももしかすると大きいかも知れない。まずは1階を探索。TOM DIXONとMINIを抜けると3m×3mくらいの小さなデザインショップが軒を連ねる。欧州だけでなく北米からも出展しており、とにかくいろんな物が買える。日本のデザイン展示会と海外のデザイン展示会の最大の差はここにある気がする。欧州は「展示会=買える場所」という認識なのだ。サテリテ出展時ももちろん「これはここで買えるの?ほしいんだけど」と言われた事もある。考えれば素晴らしいデザインに出会い、素敵だと思った次にはそれが欲しいともちろん思うと思う。ただでさえ欧州の人と日本人では一般層のデザインに対する意識は違うのだが、もっと言えばデザインに対してお金を支払う意欲がすごく高いと思う。
「全ての展示品が買える展示会」
こういう事を少しづつでもしていけば日本も変わっていくのかも知れないし、全体でやらなくても大阪という地方都市からそれをスタートさせたっていい。何より一般の人がデザイナーと直接触れ合う機会が日本は少なすぎる気がする。もっとお茶の間にデザインを持ち込まなければ一般の人の興味は得られないだろう。強烈なインスピレーションを得ながら今回の出展の為にお世話になった人に何か買おうと物色を始める。
台湾でもそうだったが最近はワークショップから販売を一貫して行う「デザイン体験ショップ」が主流だ。日本ではあまりないが海外ではすでにそういったプラットフォームを持っており、購入する人がデザインの一部に参加するという次世代型の消費スタイルが一般化してきている。もちろん感性は人によるし、より自分に合った物を欲しいと思うのは当然だろう。DESIGN JUNCTIONではセラミックとガラス工芸、レザーに関するワークショップが行われていた。これはとても楽しそうだったが時間が心配だったので脇目に3m×3mのマーケットへ。
色々見て行くと欧州はほんとうに暮らしにデザインが根付いているなぁと思う。壁にかけるスチールの小さなパーツまで売っている。しかもとてもデザインがいい。ポスター一つとっても日本には絶対ないであろうものが多数あった。日本にはたくさんの物があるけど本当に日本にここにしかないという保証つきのショップなど開いたら面白いんじゃないかと思ったりもした。デザイナー以外のインスピレーションがどんどん沸く。さらに会場を奥へ進むといつもみているデザインのウェブサイト[DEZEEN]がショップを出している。そうDEZEEN WATCH STOREだ。
今回の旅で買いたいと思っていた物の一つが販売されていた。無印などのプロジェクトでも有名なSam Hecht氏がデザインした[BOTTLE WATCH]だ。ある日Sam Heckt氏がガラス瓶の底の突起を数えた時にその数が60個で設計されている事が多い事に気づいた事から生まれたデザインだ。
これを購入すれば旅の目的の一つを達成。もちろんこれは日本にはまだ入っていない(いずれ入ってくると思うが)。会計をしようと思うと「現金かカードどちらにしますか」と聞かれたので「カードでお願いします」というと、iPadをレジとした物が登場した。VISAカードで購入したが、後からメールでPay Palで決済されていた。簡単に買えるという仕組みもまたデザインに優れた商品を一般層に広める事に一役買っていきそうだと思った。
あっと言う間に昼に。一階の物色もほどほどに二階へあがってみた。一階と同じだけのスペースに「買えない展示」が拡がっていた。入ってすぐのVENTULA LONDONはとても良かった。これはミラノサローネで始まったVENTULA LAMBRATEと同じオーガナイザーがロンドンでも始めた展示だ。今年が初回なのだろう。先鋭的なデザインが並ぶ。詳細は明かせないがこういった「デザインを前へ進める行動」と、前述にあった「デザインの裾野を広げる行動」の両方が無ければ都市のデザインは発展維持しないのだろうと思った。一階のアットホームなショップとのコントラストが心地よい展示。
しかし広い。気が付けば(昼を食べる為の)集合時刻に。メンバーと集合し係員に再入場できることを確認し、一旦会場を後に。
良く晴れたロンドン。少し暑いくらいだ。僕らはwi-fiを持っていたので地図を見る事ができたが、電波の無い所で地図を見る方法がある。Maps meというアプリだ。このアプリはあらかじめダウンロードしておけば電波がなくても地図を見る事ができる。海外に行って迷子になる恐れのある人は出発前にこのあたりをきちんと準備しておくとトラブルも回避できるだろう。と言う事で近所に公園を発見し、そこに向かう。
日差しが心地いい。セントラルだからだろうか。ロンドンの公園はとても美しい。お昼時間にはみんな芝の上に座り昼食を食べている。温かいし、気候がいいので僕はつい裸足になってしまった。芝の感触は今も思い出せる。そして今日はまた別の寿司を買っていた。昨日よりも大きなパッケージだったが知っているネタは昨日よりも少なかった。なんということだ。ロンドンの人に正真正銘の日本の寿司を食べさせてみたい。どうだっていい話だが。
メンバーと少し談笑する。こういうリラックスした空気の中色々語るのも悪くない。いつもこういう時間は欲しいなと思う。
足のだるさが抜けきった所で再びDESIGN JUNCTIONへ戻る。二階からスタート。ここの展示の内容をお話しできないのは心苦しいが、個人的にはこのブログを読んでくれている人は、やはりそれぞれが見に行ってほしいなと思うし、ちゃんと国外へ実物を見に行くことが最もデザインを吸収できると思うのでやはり書くのをやめる。僕の解釈抜きでありのままにデザインを見てほしい。良かったのはVENTULA LONDONとその横にあったブースと、CONSTANTIN GRCIC氏がデザインしたシンクのプロトタイプがとても良かった。それ以外も本当に素晴らしい。
DESIGN JUNCTION内である日本人デザイナーと出会う。NORIE MATSUMOTOさんだ。RCAを卒業後、UKに住み今では自身のブランドを展開しているそうだ。作品はフォールディングチェアと、壁面フック、パナマハット。どれも素晴らしかった。海外でがんばっている日本人を見ると自分も同じようになれるだろうかと考える。まぁ道は色々あるので焦らず自分に合ったやり方で進んでいくほかないと思うが海外というのはやはり強いあこがれがある。
さて、DESIGN JUNCTIONを一頻り見ればすでに夕方になっていた。もう少し早めに見終わっていれば西ロンドンでやっている100% LONDONも見に行きたかったがさすがに今から行くのは不可能と判断し、セントラルを徘徊する事に。
セントラルにはたくさんの公園がある。日本の公園と違い芝の整備が行き届いていて見ていて本当に美しい。公園を散策していると鳩のほかに見慣れないかわいい動物がピョンピョンと。そう、日本ではめったに見かけないが、海外の公園にはリスがいることも珍しくない。特にメイプルの巨木があるためリスには格好の住処なのだろう。近寄ると当然逃げていくが何か持っている(素振りを見せる)と近寄ってきてくれる。見た目がかわいいが噛むかも知れないし何か持っている可能性もあるかも知れないので無闇に手出ししない方がいいと思う。少し遠くから見ているくらいでちょうどいい。
公園を散策し、ジェラートを食べ、本屋に行くなどセントラル観光を行う。メンバーは学校の海外研修(行先はロンドンで時期も同じ)をあきらめてまで今回の出展にかけているため、こういう時間こそ本当に海外に来た事を実感するんだろう。みんな英語もだいぶ慣れてきたようだ。Maps Meで近所を見ていると見慣れたワードを発見。大英博物館だ。
それこそ彼らと同じ14年前に行ったことがあるが、とても広い博物館で到底今からでは見れないので入口で記念写真を撮るだけにしようという話に。アジア系の観光客がかなり多い。日本に来る東洋人観光客も多いが今時は世界中を旅しているのだろう。日も暮れてきて少し早いがアパートに戻る事にした。そういえば夕食当番だった。
帰りもタクシーを拾う事にした。アパートの住所ももちろんメモしてきている。準備というのは本当に重要だ。
さてタクシーを止める。止め方もばっちり。一代目で止まってくれた。助手席側から行先を見せる。「OK。乗ってくれ」と乗り込む。酔わないように今度は前向きの座席へ。走り始めて3分。タクシーが止まった。まぁ信号だろうと思っていたが相当に長く停車している。よく見ると信号でもなかった。ドライバーが道を理解していなかったらしく、地図を見ている。待つこと10分。まだ動かない。当然メーターは上がり続ける。ちなみに日本でも停車中はメーターが上がる事がある。このまま上がり続けると相当な値段になるのでは?と思ったので催促してみた。それでも動かない。
さらに待つこと5分。ようやくスタート。それから10分くらいで到着してしまった。いったいなんだったんだろう。なんとなく予想していたが止まっている間上がったメーター分は負けてもらえなかった。交渉する英語力もないし。これも授業料だと思って支払う。
さて、いつもの町並みに帰ってきた。セントラルから戻ってくると差がすごいと思うけど僕らの拠点はここだし、なんとなく愛着がわいてきている。馴染みのTESCOで夕食の材料を買う。『ブース班がきっとお腹を空かせて帰ってくるだろう。そしてそろそろ米が恋しいだろう。』と勝手に予測し、今夜はジャスミンライスのチャーハンにする事に。雑学だが、海外でも醤油のブランドはキッコーマンだ。あまり使われないためとても小さなボトルが売っているのでこういうときには助かる。米は日本米とはいかないけどせめて味付けは近いものにしたいなとキッコーマンを購入。やけに白い卵を使って大量に作ってしまった。まぁ食べるでしょう。
「お腹すいたー!」
そうこうしているうちにブース班が帰ってきたようだ。もちろんチャーハンは喜ばれた。そして今日の報告を聞く。また別のいいお話があったようだ。これこそ海外展示会の醍醐味だと思う。色んなコネクションやいいニュース。コンタクトが増えて自分たちが大きな活動に参加していることをしっかりと感じられる瞬間。ほんとやってきて良かったなぁ。
さてTENT LONDONも折り返し。明日はインターンシップで一緒だった後藤さんや森田君が遊びに来てくれる約束になっているのでTENT LONDONに行く事にした。だいたい見たので見るところはほとんど残っていないけど。今日ブース班だったチームは明日はメンバーだけで外出。少し心配しつつもみんなしっかりと英語が身についてきているので大丈夫だろうと無理やり委任力を絞り出して保護者無しで行ってきてもらうことにした。これこそ大冒険だろう。
明日も良い一日でありますように。